無名の人の物語を歌に
前々回(2006年)の赤旗まつりに初出演。野外ステージで披露したロック調の「インターナショナル」に、老いも若きも笑顔で踊りました。あれから8年、東日本大震災後に書きためた新曲を携えて、赤旗まつりの野外ステージ(3日午後)に戻ってきます。
“国境なきロックバンド”と称されます。5人のバンドメンバーは、沖縄の三線(さんしん)やチンドン太鼓、アコーディオンなどを取り入れ、世界の民謡から労働歌、歌謡曲まで、独自のスタイルで演奏します。
ライブで必ず歌う曲があります。阪神・淡路大震災の1カ月後、被災した街を照らす満月に、復興への思いをつづった曲「満月の夕(ゆうべ)」。
「歌うたびに、いろんな人の顔が思い浮かんで、いろんな風景、いろんなにおいが立ちのぼってくる」
こう話すボーカルの中川敬さんは避難所でも200回以上歌ってきました。涙を流して聞いている人。「最高やったよ」と声をかけてくれる人。「どんな厳しい状況でも人は音楽を欲している。音楽って力あるんちゃうかなっていう確信みたいなものが生まれ始めた」
来月、発表する新しいアルバムは、各地で出会った名もなき人たちの物語を歌に込めたといいます。
タイトルの「アンダーグラウンド・レイルロード(地下鉄道)」は、19世紀の米国で黒人奴隷たちが北部に逃れるためにつくった組織や逃亡路の意味です。
日本ではレイシズム(人種差別)の動きや戦争に向かうきな臭い政治に若者らは追い詰められ、世界では内戦や紛争による犠牲が絶えない。いまも「地下鉄道」のような旅を続けている世界中の子どもたちに捧げた歌が詰まったアルバムです。
こうした彼らの音楽は、ときに「政治的」とも評されます。「社会のことや自分の身の回りのことを歌うのは当たり前で、それがロックやと思ってきた。だから『政治的』と言われると違和感がある。ただ、『社会的』と言われると、そうやろな」と語る中川さん。
アルバム収録曲「踊れ! 踊らされる前に」では、一人ひとり自分なりのやり方で異議申し立てする「3・11」後の風景を「新しい作法で♪」と歌います。「手作りのプラカードが好きでね。文字以外の余白の部分にもその人の思いが込められているから、余白から聞こえてくる声を俺らが音楽でやらなあかんと思う」
今回の赤旗まつりのステージでも、たくさんの人々の思いを音に乗せて歌います。
(「しんぶん赤旗」2014年9月17日付より)