青空寄席に最多出演の落語家、林家正雀さん。2日、第3部の中トリを務めます。
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初めて「旗まつり」(赤旗まつり)にうかがったのは74年、師匠・林家彦六(故人)のお供で多摩湖畔でした。雨で赤土がぬかるんで、すべるので、師匠の手をとって歩いたのを覚えていますね。翌年、前座で使っていただいてから「旗まつり」がある年は、ずっとうかがってきました。
師匠が長年、「旗まつり」を大事にしていました。そのことはそばにいてよく分かりました。師匠が出ると大変な歓声と拍手で。芸人としてうれしかったと思います。
あたしが一番印象に残っているのは第30回(90年)ですか、すごい嵐で、とても青空寄席をやるような状況ではありません。でも、お客様が100人以上いらっしゃる。どうしよう。多分、あたしが言いだしたと記憶していますが、楽屋のテントでやろうとシートを敷いて高座をこしらえて楽屋でやりました。お客様も演者も、お互いにせっかく足を運んだのにやれないとなったら寂しいじゃないですか。それが楽屋でやれた。うれしかったですね。
お客様とより親密に一体化しました。演目は、人情噺(ばなし)「双蝶々(ふたつちょうちょう)雪の子別れ」。あの時はちょっと違いましたね。熱い気持ちが余計に出てきて、そこにお客様の熱意が加わっていつも以上の高座でした。
噺はお客様とのキャッチボールです。投げたボールにお客様が笑ったり泣いたりして噺が盛り上がるんです。「旗まつり」では演者と一緒に盛り上がろうと、聞く気で楽しみに待っていてくださるお客様が大勢いらっしゃる。その高座に上がれる演者の幸せをいつも感じますね。
最近つくづく感じるのは落語という芸を心から楽しんでもらう時代でありたいということです。落語を聴いて笑おうというゆとりもなくなったら終わりです。平和で穏やかな世の中でないとね。
「旗まつり」は4年ぶりですか。早いですね。4年たっても芸があまり変わらないなといわれるのは嫌ですよ。少しは腕が上がったと思ってもらいたいね。会場も屋内だと、お客様の気持ちもより高座に集中してくださる。それだけ演者としては怖いですね。真剣勝負です。いつだって緊張しますがご期待いただきたいですね。
(聞き手 遠藤寿人、撮影 橋爪拓治)
(「しんぶん赤旗」2014年9月21日より)