本棚に、子どものころに呼んだ古い絵本が何冊か並んでいます。十数年前、実家から持ち帰ったものです。松谷みよ子さんの短編集「きつねとたんぽぽ」もその一冊。最終和「ぞうとりんご」を子どもたちに読み聞かせたときの衝撃を今でも鮮明に覚えています。
幼い兄弟に「かわいそうなぞう」の話を語る母親、子どもは問いかけます。戦争はまだるのかと。母親の答えは――
「いいえ、せんそうはもうないのよ。あきらやひろしやぞうが、いつまでもおいしいりんごをたべられるように、おかあさんがいうもの、せんそうをしては、いけません!って。」「おかあさんが いるから、だいじょうぶだね。」「ええ、ええ、だいじょうぶよ。」(引用終わり)
イラク戦争のさなかでした。涙をこらえ無言になった私を、子どもたちは心配そうにのぞきこんでいました。「ええ、ええ、だいじょうぶよ」――私はそう言えるのか、いや言わなければ!
全身の血が熱くなったあの瞬間を私は決して忘れません。
(「しんぶん赤旗」2015年3月13日付より)