岸田文雄外相は19日の衆院安保法制特別委員会で、他国に対する武力攻撃の発生により、武力攻撃を受けていない別の国の存立が脅かされる、いわゆる「存立危機事態」の実例について、一例も示せませんでした。日本共産党の宮本徹議員の質問の中で明らかになりました。
政府は戦争法案により、「存立危機事態」で集団的自衛権行使を可能にして海外での武力行使に踏み出そうとしています。同事態の実例がないことが政府答弁で明らかになり、法案の必要性そのものが崩れた形です。
宮本氏は10日の同委員会で「存立危機事態」が世界で起きた例があるかと質問し、岸田外相は「改めて正確を期して報告する」と答弁し、調査していました。
「調べたが、事例はなかったということか」と宮本氏は追及。岸田外相は、「存立危機」を理由に集団的自衛権を行使した国が過去の国連への報告14件の中には存在せず、その他の事例についても「具体的な情報収集をしているわけではなく、例を挙げるのは大変困難だ」と述べ、一例も挙げませんでした。
宮本氏は、「世界のどこを探しても『存立危機事態』はないということだ」と指摘し、「安全保障環境の根本的変容」を集団的自衛権行使の根拠にするが、法案が必要だという「立法事実がない」と指摘。「集団的自衛権行使に道を開くために、空想的観念をつくりあげ、憲法解釈を百八十度変えることは許されない」と法案撤回を求めました。
(「しんぶん赤旗」2015年6月20日付より)