海老名さんらが集い
約2時間の爆撃で推計10万人以上が犠牲になった太平洋戦争中の東京大空襲から71年となるのを前に9日、東京都台東区の上野公園にある追悼の碑と母の像の前で「時忘れじの集い」が開かれました。雨が強まる中、全国から集まった遺族や市民の多数のほか、地元の小学生や幼稚園児も出席。参加者は「戦争を許さない心を持つ」「悲惨さを伝え続ける」と改めて誓いました。
1945年3月10日未明に始まった空襲では、米軍のB29爆撃機約300機が東京下町の人口密集地に集中的に焼夷(しょうい)弾などを投下。非戦闘員を標的とした無差別攻撃で、犠牲者の多くは一般人でした。
追悼の碑と母子像は、自身もこの空襲で両親など家族6人を失ったエッセイストの海老名香葉子さんが、有志と2005年に建立。「集い」は海老名さんが呼びかけて開催しており、今年で12回目です。
参加者は海老名さんの長男で落語家の林家正蔵さんの呼びかけで犠牲者に黙とう。出席した漫画家のちばてつやさんは「当時は中国にいて、帰国して大空襲を知り愕然(がくぜん)としたのを覚えている。年月がたち、戦争の悲惨さがかすれてしまいそうでつらい。伝えていきたい」と語りました。
海老名さんは「80歳を過ぎたが、30代で死んでいった両親を今も恋しく思う。『香葉子は強い子だ』という母の言葉に守られてきた。戦争をなくす心を、次の世代に継いでほしい。これが体験者の使命です」と声を震わせました。
地元の小中学生や幼稚園児が歌や朗読を披露。小学5年の女児は「戦争のない時代を私たちがつくる。1人ひとりが、戦争を許さない気持ちを強く持って生きていく」とあいさつしました。
(「しんぶん赤旗」2016年3月10日付より)