高額海外出張、公用車での温泉別荘通い、そして政治資金の不正支出疑惑―。東京都の舛添要一知事に、「公金をごまかす人に知事は任せられない」など、都に2万件の抗議・意見が殺到しています。6月1日に開会する都議会定例会では、深まる知事の疑惑解明が大焦点となります。百条委員会設置を含め、真相究明の先頭に立つ日本共産党都議団にも注目が集まっています。
知事の疑惑浮上のきっかけとなったのは、日本共産党都議団(吉田信夫団長、17人)が4月7日の記者会見で高額海外出張の実態を公表したことでした(詳細はリンク先へ)。
調査によると、舛添知事は就任した2014年2月以降16年3月までに8回の海外出張を行い、計2億1305万円を支出していました。1回の平均費用は2663万円で、豪華外遊が問題になった石原慎太郎元知事より1000万円上回っていました。(表)
◆都知事の海外出張費用
舛添要一知事 | 石原慎太郎元知事 | |
8回 | 海外出張回数 | 34回 |
2億1305万円 | 総費用 | 5億455万円 |
2663万円 | 1回平均費用 | 1681万円 |
6975万円 | 1回最高費用 | 4811万円 |
費用が高い理由は、航空機はファーストクラスで、1泊最高約20万円の豪華スイートルームに連泊し、随行員を計98人も引き連れての視察だったためです。しかも視察先の空港では貴賓室を借り上げて計165万円を支出しました。
共産党都議団の公表を受けて、メディアがいっせいに海外出張問題を大きく取り上げ、舛添知事への疑惑が高まりました。
都に抗議・意見2万件
そんな矢先、舛添知事が15年4月から約1年間に、公用車で神奈川県湯河原町の別荘に48回と、ほぼ毎週末に通っていたことが4月27日、週刊誌報道で明らかになりました。都庁から公用車で世田谷区の自宅に帰り、さらに別荘まで公用車を乗り付けていたこともわかりました。
4月28日の会見で知事は、自宅の風呂と違って「湯河原の風呂は足を伸ばせる。広いから」と説明。「全く問題ない」と開き直ったものの批判が高まり、9日になって「今後は(別荘通いの時は)公用車を使わない」と語りました。
いま、「知事の説明は納得できない」と批判が殺到しているのが、舛添氏の政治資金の不正支出問題です。27日までに政治資金問題で1万3300件、海外出張が5000件、公用車が2400件で計2万700件の抗議・意見が都に集中しています。
疑惑が指摘されているのは、舛添氏が代表の「グローバルネットワーク研究会」と「新党改革比例区第四支部」(いずれも14年解散)、「泰山会」の3団体。家族旅行の宿泊費や飲食費、ネットオークションでの美術品購入、自動車2台、肌着、漫画など。さらに、舛添氏の似顔絵入り菓子の購入費を政治資金から支出したうえ、自宅兼事務所の家賃をファミリー企業「舛添政治経済研究所」に年間500万余支出し、政党助成金を私物化していた疑惑が相次いでいます。
舛添氏は13日の会見で、13年と14年1月の千葉県のホテルでの家族旅行宿泊費、天ぷら・イタリア料理、回転ずし店の飲食費7件約45万円余は私的な支出だったと認め、返金すると表明。27日の会見では疑惑についての説明を拒否し、弁護士2人に調査を依頼したと述べたものの、いつまでに調査結果を公表するかは答えませんでした。
究明と辞職求める声
「政治資金オンブズマン」は19日、政治資金規正法違反と業務上横領罪の疑いがあるとして、舛添氏を東京地検に告発しました。
東京革新懇も19日、知事に対して疑惑の究明と辞職を求める声明を発表しました。
市民団体からは「都営住宅に入りたくても新築されず困っている人が多いのに、舛添知事が税金を無神経に使っていたのはひどい。議会で徹底追及してほしい」(東京都生活と健康を守る会連合会の坂口忠男会長)、「貧困が広がり、『お金がなくて修学旅行にも行けない』と苦しんでいる高校生もいます。税金の公私混同をする舛添知事は辞めてほしい」(新日本婦人の会東京都本部の佐久間千絵会長)の声が上がっています。
意義ある共産党の“発掘”
清水勉弁護士(全国市民オンブズマン連絡会議幹事)の話 共産党が舛添知事の海外出張問題を発掘して、石原元知事の時よりはるかに高い経費をかけていたことを見つけたことは、非常に意義がある。それを契機に公用車問題や、政治資金疑惑をメディアが報道し、国民の関心が一挙に広がるけん引力になったと思う。
舛添知事は調査を第三者に委ねるといっているが、知事自身が事実関係を説明しつくすことが必要だ。都議会としても事案の重大性からして、百条委員会を設置して証人・参考人を呼んで事実を明らかにし、検証すべきだ。
共産党都議団「百条委を」
舛添知事の一連の疑惑を厳しく追及しているのが、日本共産党都議団です。議長と各会派に対し、臨時議会の開催と強力な調査権を持つ百条委員会を設置し疑惑の徹底究明を行うよう提案しています(詳細はリンク先へ)。
都議団は、公用車で毎週末のように別荘が良いすることは都民の理解を得られないと批判し、公用車利用の全容公表を舛添氏に要求。第三者委員会を設置して公用車利用の実態を検証し、都民の理解が得られるルールをと求めました。
共産党都議団は19日、政治資金疑惑について舛添知事に公開質問状を出し回答を求めました(詳細はリンク先へ)。舛添氏の事務所は回答期限日の26日、「現在弁護士による厳正な第三者の調査をお願いしている。個々の回答は差し控える」と拒否しました。
都のある幹部は記者に語りました。「職員はみな肩身の狭い思いをしている。共産党が海外出張の無駄遣いをオープンにしたことは高く評価している。この際、公用車と政治資金疑惑も徹底追及してほしい」
◆舛添氏の疑惑と経過
2001年7月 | 舛添氏、参院議員に初当選 |
2010年4月 | 舛添氏、新党改革代表に就任 |
2013年12月 | 猪瀬直樹知事が5000万円裏献金事件で辞職 |
2014年2月 | 舛添氏、都知事に就任 |
2016年4月7日 | 日本共産党都議団の調査で舛添知事の豪華化外出張が発覚 |
27日 | 舛添知事が公用車で毎週末、神奈川県湯河原町の別荘に通っていた事実が発覚 |
5月13日 | 記者会見で家族旅行の宿泊費支出など7件45万円余を返還すると表明 |
19日 | 共産党都議団が舛添知事に公開質問状を提出 |
24日 | 共産党都議団が都議会議長と各会派に百条委員会の設置を提案 |
(「しんぶん赤旗」2016年5月31日付 岡部祐三・川井亮記者記事より)