日本共産党の山添拓議員は21日の参院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、多国籍企業の利益を守るために使われるISDS(投資家対国家紛争解決)条項について、投資先の国の司法権さえ侵害する危険があることを明らかにしました。
1990年代以降、多国籍企業がISDS条項を使って提訴し、投資先の国内司法判断を、仲裁判断で否定する事件が起きています。山添氏は、環境汚染を続ける米石油会社に損害賠償を命じたエクアドルの地方裁判所の判決の効力停止を仲裁廷が命じた事例まであることを指摘。「仮に、日本国内の司法判断で勝訴しても、仲裁廷で負けた場合、日本政府は(仲裁判断に従って)賠償金を支払うのか」とただしました。
石原伸晃TPP担当相は「条約を順守する立場から、仲裁判断に従う」と答えました。
次いで、金田勝年法相は、日本政府が仲裁判断に従わず、投資家が強制執行を求めた場合、国内裁判所が「公序良俗違反」などを理由に仲裁判断を覆すこともありうると答えました。
石原、金田両大臣の答弁を受けて、最終的に岸田文雄外相は「(仲裁廷の)裁定の趣旨と、国内裁判所の判断の双方を踏まえた代替的な対応をはかることで、ISDS手続きを無意味にしないようにする」との見解を示しました。
山添氏は「ISDS(による仲裁判断)を尊重して解決をはかるというなら、主権の侵害となる」と批判。国内裁判所の判断より仲裁判断を優先し、司法権の独立を脅かすISDS条項の危険性をあらためて強調し、TPPからの撤退を求めました。
(「しんぶん赤旗」2016年11月22日付より)