都市に農業が必要 都議選で問われる抜本策

新鮮な農産物の供給と体験交流、防災など大切な役割がある都市農業と農地。開発優先の自民党政治のもとで減り続けています。一方で、たたかいに押され「あるべきもの」として振興を目的とする法律もできました。東京都議会議員選挙でも都市農業を守る抜本対策が問われています。(中沢睦夫)

体験農園「楽しい」

「ここまで良い野菜ができるとは想像してなかった。やって良かったです」。東京都の北西にある清瀬市の「体験農園」で野菜の手入れをしていた男性(41)は、2歳の娘さんと水やりをしたあと、家族で「春の収穫祭」に参加しました。

体験農園は、現行の制度でも都市農業(市街化区域内の農業)を振興する一つとして広がっています。農地は農家が耕作・管理し、参加者は一定の入園料を払い、作り方を教えてもらい収穫物を得る仕組みです。

農園の持ち主、小寺理一さんは、江戸時代から続く農家です。「いま受講者さんは60人ほどだが、もっと増えればいいね」と語ります。春の収穫祭をしたサポーター会の事務局を務める70代男性は、「地域の結び付きを大切にしたい。そのため、行政にも支援を要求している」といいます。

市街化区域は、高い固定資産税と相続税がかけられています。農家は農業収入だけで生活ができないため、農地の一部を貸すなどして税金を納めています。

小寺さんの場合、1・5㌶ほどの農地自体は、農地課税となる「生産緑地」に指定されていますが、納屋や屋敷林の用地も含め、固定資産税は年間400万円ほどになるといいます。相続税は数億円になります。小寺さんは、「分割納入したが、延滞金は1日10万円にもなった。銀行から借り入れて払ったよ」と振り返ります。

「振興法」が誕生

全国にある市街化区域の農地は、この20年間で半減し、東京都でも約4割がなくなりました。自民、公明が進めてきた巨大開発優先の政治が拍車をかけています。

一方、直売所や体験農園、防災・環境保全を考え「農業・農地を残したい」との都市住民は8割以上です。

世論と運動におされて、2015年4月に都市農業振興基本法が制定されました。自治体は「都市農業振興基本計画」を定めることになっています。

22年には、生産緑地面積の8割で30年の期限がきます。10年の延長ができますが、市町村に買い取り申し出もできます。財源がなく、開発企業が買うことがほとんどです。

小寺さんは、「買い取り資金を東京都が援助しないと、農地はますます減ってしまう。都の予算は少なすぎる」と指摘します。

小池都政になっても、外かく環状道路の延伸など、巨大開発優先です。東京都議選でも問われます。

小寺さんが会長を務める東京農民連は、後継者対策や農地を守る財政支援を求めています。体験農園の発祥地の練馬区で農業委員を務めた東京農民連の武藤昭夫事務局長は、「都の基本計画案には、『いま農地保全に一歩ふみださなければ、農業・農地を生かしたまちづくりの機会は、永遠に失われる』とある。まさにその通りだ。企業に農地を渡すのでなく、家族農家が住民と協力して農業を振興することが必要だ」と語り、「〝1㍍1億円の外かく環状道路〟など大規模開発にメスを入れ、暮らし・福祉の充実をいう日本共産党に期待したい」と話します。


直売所などへの支援 共産党一貫して主張

日本共産党は、「都市に農業・農地は必要だ」と一貫して主張してきました。

大企業本位の開発優先政策のもと、1968年の都市計画法で「市街化区域」に農地を広く囲い込み、宅地並みの課税をしたことにたいし、「農業をしているのに、なぜ宅地並みの重税か」と猛反対がおき、10年以上の営農継続で農地並みとなる「長期営農継続農地制度」ができました(1982年)。しかし自民党、公明党などが92年に廃止し、厳しい要件の「生産緑地」に指定されないと宅地並み課税となる制度になりました。

この改悪に反対した政党は日本共産党だけでした。その後、生産緑地に指定する要件の緩和、農業施設用地の重税是正、直売所や体験農園などの支援を要求してきました。

2010年には、「住民の暮らしに欠かせない都市農業を発展させるために」を発表し、国会、都議会でその具体化を求めてきました。


固定資産税の軽減 日本共産党都政政策から

都市農業振興基本法を踏まえた総合対策を都として強力にすすめる「都市農業振興条例」および「都市農業振興計画」をつくり、固定資産税の軽減、農業後継者の育成など農業・農地を守る支援策を抜本的に強化します。

農産物の直売、加工、地産地消などのとりくみを支援し、生産緑地を買い取る区市町村を助成します。

(「しんぶん赤旗」2017年6月3日付より)

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