東京都築地市場(中央区)の豊洲新市場(江東区、東京ガス豊洲工場跡地)への移転問題で、小池百合子知事は20日、市場を豊洲に移転するとともに、築地市場は売却せず、市場としての機能を残す基本方針を発表しました。この基本方針をどう見るか、日本共産党東京都委員会の若林義春委員長に聞きました。
小池知事が築地市場を売却せず、市場としての機能を残すと表明したことは、市場移転問題をめぐる都の従来の立場からの大きな転換であると評価しています。
都の立場の大きな転換
石原慎太郎知事以来の都政は、築地市場を売却し、豊洲開発の原資にするというものでした。小池知事はこの立場からの大転換を都知事として初めて公式に発表したわけで、大変重い意味を持ちます。
築地の仲卸業者の8割が築地で商売したいと願い、すし屋さん、小売店も「やっぱりお魚は築地から」と声を上げてきました。日本共産党都議団も十数年間にわたって豊洲移転に反対し、築地市場の再整備を訴えてきました。こうした力が、石原都政以来の築地売却という方針の根幹を覆し、一歩動かしたことは明らかです。
しかし、築地をいったん更地にして、豊洲移転を進めるという小池知事の基本方針には非常に重大な問題があります。
安全検討の形跡がない
豊洲市場の最大の問題は、東京ガス工場の操業がもたらした土壌汚染問題、食の安全・安心の問題です。小池知事は都議会第2回定例会で、都が約束した「無害化」は達成できていないとしておわびしました。汚染土壌を取り除くことはできず、安全が確保されていないことを認めたわけです。
「築地ブランド」守れず
小池知事が「築地ブランド」は築地市場の存在と一体のものだと認めたことは重要ですが、市場を豊洲に移転して、「築地ブランド」を守れるでしょうか。
仲卸業者は「豊洲に移転したら体力が持たない。営業を続けられない」「やめる人が続出し、仲卸が激減してしまう」と訴えています。
市場機能を豊洲と築地に分断し、「5年たったら、希望する業者は築地に戻す」という方針で築地ブランドを守れるというのは、根拠がないのではないでしょうか。
「食の安全・安心」を守り、「築地ブランド」を守るためには、豊洲移転の方針は再考し、築地市場の現在地再整備のあり方を、業者のみなさんと真剣に協議すべきではないでしょうか。
かつて再整備がとん挫した時とは違い、建築技術の発展は、営業しながらの再整備を可能にしています。専門家の英知を結集して真剣に検討すれば、必ず道は開けます。
小池知事が提起した方針の具体化はこれからであり、この問題を決めるのは都議会です。23日告示、7月2日投票の都議選がいよいよ大切になっています。
都議選いよいよ大切に
約6000億円もの整備費をかけ、汚染の無害化にも失敗した豊洲移転を推進した自民党、公明党の責任は大変重いものがあります。自公はこのことに何の反省もなく、2010年の都議会付帯決議で自ら行った「無害化」の約束もほごにして、豊洲移転を推進しています。
こういうやり方が都政の闇をつくり、間違った税金の使い方をもたらしました。こういうことを繰り返さないためにも、都議選で自公に厳しい審判を下す必要があると思います。
一貫して豊洲移転に反対し、築地市場の現在地再整備を主張し、その中で豊洲市場の建物下に盛り土がされていない事実を発見するなど、共産党都議団の論戦の力は、世論と運動の力とともに、豊洲移転を止める大きな力となってきました。
豊洲移転を中止し、築地市場を発展させられるかは、都議選で共産党を伸ばせるかどうかにかかっています。
(「しんぶん赤旗」2017年6月22日付より)