《羽田空港増便計画》騒音・汚染…住民不安 都心低空飛行「撤回を」広がる反対運動

国や都に声をあげる

国が羽田空港(東京都大田区)の増便を理由に、都心の住宅密集地上空を低空飛行するルートの新設を計画している問題で、地域住民から反対の声が上がっています。

羽田空港の着陸便は現在、東京湾上空を飛行する海側ルートだけです。都心部上空を飛行するルートは騒音問題などで住民や自治体が反対し、1998年から中止されていました。

五輪に向け増便

ところが、国土交通省は2014年7月に、2020年の東京五輪に向けた国際便増便計画を発表。示された新ルートは、それまでの「海から入って海から出る」ルートを全く無視し、都心上空を通過するというものでした。

南風のときは、埼玉県の上空から南下し、板橋、練馬、中野、新宿、渋谷、目黒、港、品川など各区の上空を飛行して滑走路に降下。北風のときは、離陸した飛行機が、荒川に沿うように江東、江戸川、葛飾などの各区を通って飛び立ちます。

南風時ルートの品川区では、大井町駅付近で高度約300メートル、八潮団地付近では約200メートルの低空を通過することになります。学校や保育施設、高齢者施設もある密集地域を低空飛行する新ルート計画には、住民から強い反対の声が上がっています。

住民が不安を募らせているにもかかわらず、国は自治体や地域住民に対し十分な説明をしていません。

東京都の姿勢も問題です。都は2014年に各区市の意見を国に反映させるための連絡会をつくりましたが、設立以来、開かれているのは非公開の幹事会のみ。都政の透明化とは程遠いのが現状です。

騒音問題では、現在でも品川区内の高度300メートルを飛ぶ地域で計測したところ、80デシベルを超える騒音が計測されました。今年3月に日本共産党の品川区議団が実施したアンケートでは、2211人から回答があり、82%の人が新ルートに反対と答えました。特に心配することとして、91%の人が「騒音」と答えています。

大気汚染問題でも、窒素酸化物やPM2.5(微粒子)、ナノ粒子の増加が明らかになっており、人体への影響が心配されます。

落下物や墜落による地上への被害も懸念されています。今回の飛行ルートでは、川崎コンビナート上空の飛行も解禁されています。まさに住民の安全性を投げ捨てた計画です。

来月パレードも

羽田空港の低空飛行計画に反対する地域住民と白石たみお都議(パレード前列中央)=2016年10月22日、東京都品川区

羽田空港の低空飛行計画に反対する地域住民と白石たみお都議(パレード前列中央)=2016年10月22日、東京都品川区

飛行ルートにある関係各区では、地域住民の反対運動が広がっています。

品川区では、2015年9月に「羽田増便による低空飛行ルートに反対する品川区民の会」が発足。街頭宣伝や区議会、都議会、国会に向けての署名運動、パレードなどに取り組んできました。

港区では、町会単位の運動が進み、去年9月の集会には町会長やマンションの管理組合なども参加。地元の人たちとの懇談会を積極的に開き、10月21日にはパレードを計画しています。

みなとの空を守る会の増間碌郎共同代表は、「今後とも町会と力を合わせて、区や都、国に対して声をあげていきます」と語りました。

東京連絡会発足

東京都全体の活動を集約する「羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会」も2016年4月に発足。現在は新宿、目黒、港、品川、豊島、板橋、江東、江戸川の各区にある8つの会が参加、大田、文京両区の会とも共同しています。

同会の秋田操共同代表は、「多くの都民に実態を知らせるため、今後も講演会や署名・宣伝活動、パレードなどに取り組み、選挙でも争点にしていきたい」と話します。

住民とともに運動してきた日本共産党の白石たみお都議は、「今回の新航路問題は、従来の『住民の負担をいかに軽減させるか』という航空政策を180度転換させるもの。地域住民が被る負担への対策を投げ捨てていると言っても過言ではない。命とくらしを犠牲にする羽田計画は撤回するべきです」と主張しています。

(「しんぶん赤旗」2017年9月21日付、山岸学記者記事より)

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