【国民健康保険】来年4月制度変更 さらなる負担増に?! 財政支援続けて 都議会で焦点

【国民健康保険】来年4月制度変更 さらなる負担増に?! 財政支援続けて 都議会で焦点

 重すぎる保険料負担に「払いたくても払えない」人(滞納者)が加入者の2割にものぼる国民健康保険。これまで区市町村が運営を担ってきましたが、国の制度見直しにより、2018年度から都道府県が区市町村と共に国保の事業者となり財政運営の主体を担うことになります。都は関連する条例案を、1日開会の都議会定例会に提案しています。
 東京都国民健康保険運営協議会(都運協)は11月21日、都の諮問を受けて、区市町村が都に納める納付金と各市町村に示す標準保険料率の算定方法を盛り込んだ国保の「運営方針」案を、賛成多数で可決し、東京都に答申しました。これを受けて都は、都議会定例会に関連する条例案を提案し、都としての「運営方針」を決定する方向です。
 同時に都運協で示された国の仮係数に基づく来年度の標準保険料の試算は、一般会計からの繰り入れがない場合は、都民一人あたり平均で16年度と比べ1・3倍、府中市は1・6倍に跳ね上がるという驚くべきものでした。負担が軽くなるどころか、ますます払えない人が増えることが容易に予想できるものでした。
 
見直しの狙い
 東京では都民の4人に1人に当たる345万人が加入し、高齢者や非正規労働者など所得が低く医療にかかる負担が大きい人たちが多いという構造的な矛盾を持っています。また、国がこの間、国庫負担の割合を減らしてきたため保険料が上がり続けてきたのです。
 区市町村が一般会計から国保会計に「法定外繰入」を行って、保険料の負担を軽減してきました。都内では自治体合計で1169億円(14年度)です。
 今回の国保の都道府県化は、加入者の所得が低いが負担は大きいという構造的矛盾を解決するのではなく、国の社会保障の負担を抑える流れに乗り、国や自治体の負担を抑えるため、都道府県がその役割を担うというものです。
 都が新たに示す「運営方針」案では、区市町村の一般財源からの繰り入れを「赤字」と位置付け、解消・削減のために保険料(税)値上げの必要性を強調しています。
 一方、「法定外一般会計繰入金の大幅な削減を行った場合、急激な保険料(税)率引上げが必要となり、被保険者に大きな影響を与えることになる」と認め、繰入金削減を段階的に行うことや、保険料の取り立てをいっそう厳しくすることを区市町村に求めています。“実績”をあげた自治体には交付金を出し、表彰もする一方、実績があがらない自治体には「特別指導検査」などを行うとしています。
 見直しの目的は、加入者の負担を軽くするのではなく、国の社会保障費の負担をいかに軽くするかだったのです。
 都運協委員の一人である日本共産党の和泉なおみ都議は、同都議団の試算も示し、方針案が法定外繰入を解消していけば大きな保険料負担になることや、収納率向上のための強権的な取り立てや差し押さえを一層押し進めるものとなっているとして反対しました。
 
板橋区議会で論戦
 都の国保運営協議会から1週間後の11月28日、板橋区議会では、日本共産党のかなざき文子区議が本会議場で区の姿勢をただしていました。
 「社会的弱者が加入者の多くを占めている国民健康保険です。これ以上保険料が引き上がらない手だてを取ることは、自治体の責務です。…一般会計から繰り入れ、同時に保険者となる東京都が保険者として応分の財政負担をするよう求めていただきたい」
 共産党都委員会の試算では、板橋区も法定外繰入をゼロにすると今年度に比べ25%~30%もの負担増になります(表)。
 坂本健区長は「法定外繰入金をただちに解消することは難しい」との認識を示し、「当面は一般会計からの繰り入れを行っていかざるをえないと予測している」と答弁。「都に区市町村に対する財政支援を講じるよう引き続き求めていきたい」と表明しました。
 
アンケートに怒り
 「ここ2年ほど収入では赤字、でも年金と国保の支払いはあるため、貯金もほぼなくなり、今後が不安」(自営業の30代女性)。「国保が高すぎる! 消費税は社会保障のために使うと言っていたのに、結局は使われずサービス削減ですか。私たちの税金、生活を何だと思っているのか」(40代アルバイト女性)。
 共産党板橋区議団が10月末から区内の全戸に配布した区民アンケート用紙は、国保料をはじめとした社会保障費の重い負担への不安や怒りなど、多くの声がつづられて続々と返ってきました。
 「ここに寄せられた声は、決して一部の限られた人のものではありません」と話す、かなざき区議。「板橋区の国保加入者の8割は、所得200万円以下です。負担が重すぎて節約できるものなんてない、というのが実情です。都の指導もあって差し押さえとか取り立ても厳しくなっています。医者にかかるのもがまんして、共産党に相談にこられる方が増えていますが、生活保護につなげざるをえないのが実態です」と指摘します。
 
所信表明で触れず
 小池百合子知事は、負担軽減に対する姿勢は一度も示さず、1日の所信表明でも、国保制度にかかわる条例案を提案しているのに一言も触れませんでした。国保料(税)の負担軽減を繰り返し提案し、先の都議選では国保料(税)を1人1万円引き下げる公約を掲げた共産党都議団は今定例会でも、これ以上の負担増は許さない立場で論戦します。
 また区市町村議会では各共産党議員団が、国保料(税)の負担増に反対し、軽減を求める論戦をくり広げています。
 
東京民報

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