2018年4月23日付「しんぶん赤旗」15面に掲載された岡部裕三記者の記事を紹介します。
小池百合子東京都知事が築地市場(中央区)を豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)に移転し、新市場に場外集客施設「千客万来」を誘致する計画が難航し、いまだに着工の見通しが立っていない背景に、新市場用地の深刻な土壌汚染問題があることが、本紙の取材で明らかになりました。
10月11日の開場予定まで5カ月余に迫っているにもかかわらず、土壌汚染対策の失敗が場外市場計画にも波及しています。
「千客万来」は、新市場に誘致する民設民営のにぎわい施設。2016年3月の公募で万葉倶楽部(神奈川県小田原市)を選定。
飲食・物販店舗、温泉付きホテルを2017年1月着工、2019年8月に全面開業する計画で、年間193万人の来場者を見込んでいました。
「しんぶん赤旗」は都に対して、万葉倶楽部が提出した要望書などを情報開示請求し9件の文書を入手しました。
2016年11月に万葉側が都に提出した確認書は、
▽着工延期による建設費の値上がり▽豊洲ブランド力の明らかな低下、テナント賃料の値下がり
▽2020年東京五輪大会前オープンには、2017年9月着工が必要
とし、早期に豊洲移転を確約するよう都に要望しました。
2017年4月の要望書は、市場用地の地下水調査で有害物質のベンゼンが環境基準の100倍の濃度で検出されてしまったとし、「豊洲市場を取り巻く状況が昨年よりもさらに悪化」「豊洲ブランド力のさらなる低下が確実」「テナント賃料の大きな値下がりが想定される」と懸念。
同6月には、これ以上の事業継続が難しく「事業の撤退も検討しなければいけない状況」だと、都に迫っていました。
関係者によると、都は土地貸付条件の変更などを提案していますが、万葉側が難色を示しているといいます。
「しんぶん赤旗」の取材に、都中央卸売市場は「協議中なので一切お答えできない」、万葉も「都と継続的に協議を行っているが、結論に至っていない」としています。
(2018年4月23日付「しんぶん赤旗」より)