中学校での性教育を自民党都議が都議会で問題視し、都教育委員会が区教委・中学校を指導することは「教育への不当介入」ではないか。性教育バッシングに抗議と批判の声が広がっています。13日に開かれた緊急集会には約170人が集まり、「『指導』撤回を」の発言が相次ぎました。
抗議集会に170人
発端は3月5日、自民党の古賀俊昭議員が文教委員会で、足立区の中学3年生に人権教育として位置づけられた総合的な学習「自分の性行動を考える」を取り上げたことです。「性交」や「避妊」「人工中絶」の言葉を使ったことが「不適切」として、都教委は区教委に「徹底的に調査」し「指導を進める」と応じました。
これに対して「〝人間と性〟教育研究協議会」(性教協)は6日、古賀議員が授業を行った中学校名と教員名を公けにして質問したことは「教育への不当な介入」だと批判。区教委への指導を中止するよう都教委に申し入れました。
集会では、なぜ「教育への不当な支配」なのか、新潟大学の世取山洋介准教授が「議会質問という形をとっているが、学校名や教員名をあげ〝是正〟を目的として質問していることは明らか」と指摘。「安倍内閣の下で、法令による教育への国家統制が一段と強化されているなかでの新たな動き」とのべました。
古賀議員は2003年、七生養護学校(当時・日野市)の性教育に介入した中心人物の一人。都教委に処分された教員らは訴訟を起こして勝訴し、最高裁は「教育への不当な介入」と認定しました。当時、弁護団事務局長の中川重徳弁護士は「七生養護学校事件の性教育バッシングと本質は同じ」とのべ、「判決は七生養護の性教育が、学習指導要領や発達段階に反していないこと、学校の進め方は望ましいと認定。自信をもつべき」と訴えました。
性教育の推進を
子どもたちを取り巻く現状を踏まえ、「性教育の推進」を求める声もあがっています。足立区立中学校が今回行なった授業は、中学生を取りまく予期せぬ妊娠や人工中絶、性感染症など性に関する深刻な状況を踏まえたもの。中学校を卒業後、「安全に幸せに生きていってほしい」という願いから、教員たちが学校ぐるみで検討し、実践しました。
各地の学校で性教育の講演をしているNPO法人ピルコンの染矢明日香代表は、性交経験者が中学生の男子4%、女子5%、高校生で男子15%、女子24%もいるとし、「刑法で性行為に同意する能力があるとされる年齢は13歳。ならば性行為の仕組みや影響、リスクについて同年齢から伝えるのが大人の責任」と強調しました。大学生の時、予期せぬ妊娠、中絶を経験した染矢さんは「中高校生で受けた性教育は生物的な内容。知らないことから悲しい思いをする前に、正しい選択ができる力を育むようにすべき」とのべました。
国内外の性教育に詳しい女子栄養大名誉教授の橋本紀子さんも「多くの国で性交や妊娠、避妊や中絶について、中学生段階までに扱っている」とのべ、性教育について「日本も国際基準をベースに学習指導要領を整備する必要があり、何よりも教員の創意工夫と豊かな教育実践のために教員に教育の自由を」と強調しました。