東京都渋谷区の幹部職員が4月に、自衛隊で研修したことが分かりました。
自衛隊での研修に対しては、有識者から「自衛隊は防災のための組織ではない。なぜ自衛隊で研修する必要があるのか」という批判があがっています。(東京都・川井亮記者)
区によると、研修は部長・課長級職員を対象に任意で実施。
4月23~24日に陸上自衛隊練馬駐屯地(練馬区)で1泊2日の日程で行い、職員8人が参加しました。
内容は、災害時における自衛隊の活動の紹介や、災害時に使用する装備品の見学をした他、荷物を背負って8キロの道 を歩いたり、柵や一本橋を越えたりする「総合訓練」、ロープの扱い方の練習もしたといいます。
労組が反対表明
同区は今年2月頃に研修計画を決定して陸自側に要請したとして、「研修について陸自側から事前に提案はなかった」と説明。当初、4月と5月の2回の研修計画を示していましたが、その後、「自衛隊での研修は1回だけで、今後行う予定はない」としました。
区職員労働組合は「区の地域防災計画では、職員の役割と自衛隊の役割は明確に分かれている。 ロープや徒歩行などの訓練内容が地域防災計画にどのように役立つのか明確でなく、『被災者の救援と生活を守る直接的支援』という区職員の本務とも連動していない」として反対を表明しました。
日本共産党区議団(菅野茂団長、6人)は4月20日、「実力組織である自衛隊は、目的も求められる資質も、自治体職員とは正反対のもの。災害対策を言うなら、震災で被災した自治体で自治体職員に何が求められるかを学び、区の施策に生かすことこそ研修として有益だ」として、長谷部健区長に研修中止を申し入れました。
訓練は自治体で一方、東京23区職員の研修をしている特別区職員研修所では、「行政の災害対応」「地域の防災活動IT災害と報道」などを内容とする「防災士養成講座」を独自に実施しています。
渋谷区の担当者は「民間や特別区職員研修所での研修があることは知っているが、自衛隊でも災害時の役に立つ研修ができそうだということで行った」と話します。
これに対して自由法曹団東京支部事務局長の平松真二郎弁護士は、「災害対応の訓練なら自治体で行われるべきであって、自衛隊駐屯地での宿泊訓練の必要はない」と指摘しています。
「検証が必要」岡田正則・早稲田大学 大学院法務研究科教授
自衛隊が持つ知識や能力は本来、防災ではなく戦闘準備のためのものです。
その自衛隊での訓練に職員を派遣することは、消防や山岳レンジャー組織に派遣するのとはわけが違います。
自治体が防災で求められる役割は、
①予防 ②発災時の対応 ③住民の当面の生活復旧 ④復興
という各局面があります。災害対策をいうならば、なぜ自衛隊での研修なのか。詳しく検証する必要があると思います。
(2018年5月24日付「しんぶん赤旗」より)