声上げて教育と生活守ろう 非常勤講師 日大が大量雇い止め計画

声上げて教育と生活守ろう 非常勤講師 日大が大量雇い止め計画
 関西学院大学とのアメフト戦で悪質なタックルをして選手を負傷させ、批判を浴びた日本大学(千代田区)で、非常勤講師の大量雇い止め計画が問題になっています。雇い止めした分の授業は専任教員に現行の授業数の6割増で担わせます。一部はすでに実行されたこうしたリストラ計画は、アメフトタックル問題から監督を辞任し、4日付で懲戒解雇された内田正人氏(人事担当常務理事)が策定したもの。9月末に100人での結成を目指す日大ユニオンは、内田氏と田中英壽理事長の辞任を要求。雇い止めされた講師らが地位確認を求めて提訴も。生活、教育・研究を守ろうと声を上げています。

ユニオン「使い捨て許さない」
 日大が非常勤講師の取り扱いを変えることを理事会決定したのは、内田氏が人事部長だった2015年。その際の決定文書には、「経営の基本方針でも示したとおり、専任教員の授業持ちコマ数の適正化(6割増)など、教員人事配置計画の見直しを図る過渡期において、非常勤講師の無期転換権発生を認めることは今後の大学運営に支障をきたす可能性が大きい」という文言があります。
 
 日大は16年に、開設された三軒茶屋キャンパス(危機管理学部・スポーツ科学部)ではじめてこの方針を適用。18年3月に、英語を教えていた15人の非常勤講師を雇い止めしました。
 
 人事部文書は、この雇い止めが、経営トップの田中英壽理事長の基本方針に基づくもので、労働契約法による無期転換権発生の2018年4月に無期転換権を与えないために行われことをはっきりと示しています。
 
 三軒茶屋キャンパスは大学設置審議会に提出した計画の進捗を見守られている、4年間の期間の途中です。雇い止めされた教員は、4年間は勤務してほしいと説明されており、違法性の高い解雇であることは明らかです。
 
学生の応援を受けて
 真砂久晃さん(50代)は雇い止めされた英語教師の原告で、提訴に当たり原告団長になりました。専門はイギリス文学の詩だという真砂さん。日大で28年間、勤務してきました。雇い止めで、月20万円ほどの減収です。
 
 真砂さんは専任になろうと、何度も挑戦していました。そのたびに、50倍、100倍という高い倍率に振るい落されてきました。提訴への思いを、「解雇されるようなことは、何一つしていないのにクビになるような職場は絶対におかしい。本部は我々を人間と思っていない。非常勤講師を使い捨てにすることは許せない」と力を込めました。
 
 真砂さんは、卒業生やその家族などからユニオンに激励の手紙が届いていることを喜びます。
 
 その一つは、危機管理学部英語教員の井上悦男さん(日大ユニオン副代表)の受講生からユニオン準備会ブログに寄せられた応援メッセージです。
 
 メッセージを書いた受講生は、大学3年の冬に院への進学を決め、苦手な英語に苦心したときに井上さんから丁寧な指導をしてもらったと書いています。自信を失いかけた時に、井上さんから深夜、メールが届き、力をもらったと振り返る学生は、雇い止めに対して、「解雇は大変残念だ。技術の進歩がめまぐるしい現代でも、『最後は人間だ』と思う」と大学の方針を批判しています。
 
 井上さんは、元受講生のことを心配します。「こんな違法な雇い止めが他大学へ、社会へ、広がっていくとしたら大変なこと。僕たち教員は40人いれば一人一人に向き合いたいと思っているのに」
 
 
大学は企業体ではない
 真砂さん、井上さんをはじめ多くの教員が、雇い止めに到る経営優先、もうけ主義の大学運営を批判。非常勤の大量解雇などで、第2外国語が廃止され、授業の数が減っている問題を挙げて、「学生の学ぶ権利を奪ってしまう、大学の在り方、教学の問題です」と言います。
 
 日大で長く勤めた教員はこう言います。「田中さん(田中英壽理事長)は、知の共同体である大学を企業体として見る人です。安倍さんとのつながりも深く、加計学園系列の千葉科学大と倉敷科学大にしかない危機管理学部を日大でつくり、安倍さんが名誉会長をしている『安全保障危機管理学会』に所属したり、おかしなことが続いている。アメフト問題は、そうした専制支配の矛盾が噴き出たものだ」と語りました。
 
日大教職員組合 山本篤民書記長の談話
 大学の経営優先、教学(教育と学問)は後回しという現状に、私たちも、「ここで変えなければ」という思いを持っています。
 
 アメフト部の問題で学生を傷つけてしまったことは残念で、教員として責任も感じました。大学上層部の刷新を私たち専任教員の労組も求めていきます。
 
声上げて教育と生活守ろう 非常勤講 師 日大が大量雇い止め計画
 

東京民報

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