「しんぶん赤旗」に、11日に開場が迫る豊洲新市場が抱える問題についての特集記事が掲載されましたので、ご紹介します。
豊洲新市場で9月、6街区水産仲卸売場棟西側バース(搬出入口)で、地盤沈下による長さ10メートル、高さ5センチのひび割れが起きていることが発覚しました。
しかも、都は本紙の取材に対し、この箇所を含む11カ所の修復や経過観察が必要なひび割れに加え、用地内に無数のひび割れがあることを昨秋から把握していたと認めました。都は、ひび割れの事実を1年間にわたって一切公表せず、都議会にも、農水省にも報告せずに開場認可申請していたのです。
同月26日の都議会代表質問で日本共産党の、とくとめ道信都議が、沈下の原因の科学的調査を求め、今後は起きないとする根拠をただしましたが、小池百合子知事は根拠も示さず、調査も拒否しました。
豊洲新市場ではさらに、23日、6街区北側のマンホールから未処理の地下水が地表に噴き出すトラブルが発生。
土壌汚染追加対策工事のさなかの5月には、ウェルポイント(真空ポンプによる揚水設備)から未処理の地下水が地表に流出していたことも関係者の話でわかりました。
地下水にはいずれも、ベンゼンなどのガス工場操業由来の有害物質が含まれる可能性があります。
生鮮食品を扱う市場の「食の安全・安心」を土台から揺るがしかねません。
30日から1日にかけて台風24号が東京に接近した際には、5街区の青果棟1階の飲食店2店舗の床が浸水。
都は、排水溝が泥で詰まって雨水があふれたためと説明しています。
水産仲卸業者の男性(73)は「こんなことでは、向こうに行っても『明日は大丈夫か』と仕事にならない。みんな不安がっている。何か起きたら都には賠償する責任がある」と憤ります。
豊洲新市場は、当初から嘘とごまかし、隠ぺいに満ちていました。
土壌から環境基準の最高4万3000倍のベンゼンや、水銀、検出されてはならないシアンなど高濃度の有害物質が全域で検出され、生鮮食品を扱う卸売市場としてはそもそも不適切な場所でした。
都は土壌と地下水を環境基準以下にする「無害化」を約束。
地下水を環境基準以下とした上で、深さ2メートルまでの土壌を全て入れ替え、さらに2.5メートルの盛り土を行うとしました。
858億円をつぎ込んだ土壌汚染対策でも、汚染は除去できず失敗。2017年1月には地下水から環境基準の79倍のベンゼンなどが検出されました。
しかし、小池知事は同年6月、豊洲移転の「基本方針」を発表し、翌月には「無害化」の約束を放棄。代わりに、地下空間の床面にコンクリートを打設して換気し、汚染された地下水の水位を抑えるための揚水井戸を増やすという「追加対策」を発表しました。
科学者からは「コンクリートにひびが入れば、すき間から有害物質が地下空間に侵入する。効果は非常に疑問だ」(畑明郎・日本環境学会元会長)などの指摘があがりました。
追加対策は今年7月末に完了しました。都の専門家会議は、密室での非公式協議で追加対策を追認。
これを受け、小池知事は「安全・安心な市場として開場する条件が整った」と述べ、「安全宣言」を発したのです。
しかし実際には、7月公表の地下水調査でも、環境基準の最高170倍のベンゼンや、シアンが3街区全てで検出されています。
地下水の水位も、今月3日現在33カ所中24カ所で目標を達成できていません。
盛り土が再汚染された可能性があるにもかかわらず、専門家会議の平田健正座長は7月末の会見で、「分からない」としながら再調査を拒否する姿勢を示しました。
豊洲市場は経営面でも先行きが極めて不透明です。
開場後の水産物や青果の取扱量を過大に見込んでいることが、本紙が情報公開請求で入手した、開場認可申請書の事業計画書でわかりました。
2023年度の供給対象人口は2018年度より5万人減るにもかかわらず、水産物の取扱量は2017年度実績の1.6倍の61万6400トンに増えるというのです。
日本共産党の尾崎あや子都議が9月10日の都議会で根拠をただしましたが、都中央卸売市場の担当部長は示せませんでした。
豊洲新市場は、開場しても年々赤字を生み出すだけであることも指摘されています。
都の市場問題プロジェクトチームは2017年1月、同市場の収支は開場後、年間98億円の赤字となると試算。同年6月の報告書では、赤字は60年で1兆円を超え、他の市場の売却も必要になるとしました。
約6000億円もの整備費と開場後の維持・改修費、土壌汚染対策費が重くのしかかり、開場前から破綻の危険が明らかになっています。
「築地は守る、豊洲は活かす」―。
小池知事は2017年6月に移転方針の会見でこう述べ、築地の市場機能を維持すると表明しました。
ところが、小池知事の口からその具体策が語られることは一度もありません。市場移転の最大のごまかしが、ここにあります。
共産党都議団の再三の追及に対し、小池知事が語ったのは「新たな豊洲ブランドの確立」で、築地は更地にし民間主導の再開発を進めるとしています。
今年3月には「築地を市場として再整備する考えはない」と都議会で答弁し、都民や市場業者との約束を反故にする姿勢をあらわにしました。
築地女将さん会会長で水産仲卸業者の山口タイさん(75)は「こんな理不尽なことがあるのかと。築地はなくしてはいけない。豊洲に行っても問題だらけなので、みんなが戻ってこられる場所を守りたい」と話しています。
豊洲新市場は開場目前の現在も課題が山積です。
新市場施設の床の耐荷重不足で、築地で使っている2.5トンのフォークリフトが使えません。
駐車場不足や不便な交通アクセスにより、従業員や買い回り客が不自由を強いられます。
築地市場仲卸業者らでつくる「築地市場営業権組合」と「築地女将さん会」は3日、吉川貴盛農林水産相に対し、市場移転の延期を都に勧告するよう要請しました。
(2018年10月5日付「しんぶん赤旗」より)