仲卸、寿司店、鮮魚店 「築地に戻りたい」の声多く
深刻な土壌汚染の他にも、さまざまな問題が指摘される中、豊洲新市場(江東区)が開場(10月11日)して、まもなく1カ月。一方、築地市場(中央区)の解体工事が始まっています。豊洲市場で働く人や買い出しで訪れる人たちは、新市場をどう見ているのでしょうかー。(長沢宏幸・菅原恵子)
東京中央市場 労働組合委員長中澤誠さん
「床は滑って危ないし、中は築地市場より狭い」。こう語るのは、仲卸業者で働く中澤誠さん(東京中央市場労働組合委員長)。豊洲市場の水産仲卸売場棟で、ターレ(小型運搬車)に乗って、商品を客に届けるのが仕事です。
新鮮な魚介類を扱う仲卸業者にとって、いかに早く顧客に届けるかが勝負。築地ではたくさんの荷を載せたターレが市場の中を勢いよく走り回るのが名物にもなっていました。ところが豊洲の床は滑るため、スリップが怖いといいます。
豊洲市場の敷地は築地より広いのに、建物の敷地面積は築地と大差ありません。逆に荷さばきのためのオープンスペースが広い築地に対して、閉鎖型の豊洲はそうしたスペースがとれないために、通路まで荷物があふれてしまうのです。
中澤さんは「荷さばきの場所やトラックが停車して建物に荷物を出し入れするバースも足りない。だから荷物は外で積むし、外を走ってはいけないターレも走っている」。豊洲市場の目玉であった閉鎖型で一定温度下で衛生管理するコールドチェーンは「まったくそうなっていない」のが実態だと指摘します。
配送時間は大幅増
使い勝手の悪さも開場前から指摘されていました。中澤さんは、平屋の築地市場と違って4階建のため、客へのターレでの配送も、築地なら5分ですむのに、15~30分もかかるといいます。「あれもこれも企画倒れ。6000億円もかけて、床の積載荷重も足りない、出来損ないの物流センターだ。都は現場の声を聞いてないから、そうなってしまう訳です」と、あきれます。
開場したばかりの豊洲新市場ですが、他にも地盤沈下による道路のひび割れや、マンホールからの下水噴出、2、3階の原因不明の振動、エレベーターの相次ぐ故障など、問題が多発しています。
中澤さんは「豊洲市場はこの先何十年も赤字をたれ流し、水産業の足を引っ張る存在になる。ぼくのところには、みんな『築地に戻ろうよ』と声をかけてくる。そもそも小池知事の公約なんだから。そういう声を集めていこうかなと思っています」と語りました。