米軍横田基地に10月から正式配備された特殊作戦機CV22オスプレイに、「このままでは、家で生活が出来なくなる」と、怒りの声をあげる住民がいます。家のすぐ近くで繰り返される訓練による騒音や振動に、「オスプレイは、他の飛行機とまったく違う」と話します。訓練の様子を動画で撮影したという男性の住宅を訪ねました。(荒金哲)
基地近く住む 男性が証言
男性が、家の階段をのぼりながら、真新しい白い壁を「ほら、そこ」と指さしました。壁紙には、横向きに十数センチにわたり、ヒビが入っています。
「オスプレイが来ると、家全体が揺れるから。最近、訓練が少なかったのでヒビが収まってきたようだけど、また頻繁にやり出すだろうし…」。こういったヒビが、家に何カ所もあるといいます。
「飛行機自体は好きで、輸送機や戦闘機の音は気にならないので、この家を選んだんだ」と2日に匿名で取材に応じてくれた40代の男性は、家からほど近い、横田基地の脇にある一般道路でオスプレイの訓練を動画に撮りました。フェンス間際でホバリング(空中静止)したり、短い時間着陸して、また飛び立つオスプレイの姿が映っています。機体までの距離はわずか数十メートルで、男性が「本気で投げれば、石があたるだろうね」と話すほどの至近距離です。撮影中は、風圧で小石や木の枝が飛んでくるといいます。
動画のオスプレイが飛んでいる基地北東の誘導路周辺は、2013年に米軍が開いた「関東平野空中衝突防止会議」の配布資料によると、「強襲着陸帯」が設定されている場所です。パラシュート降下や離着陸訓練などを行うとされ、オスプレイのホバリングや離着陸もその一環とみられます。
男性が訓練中の騒音を測ってみると、家のなかでも90~100デシベル。電車が通るときのガード下や、地下鉄構内など、会話がほとんどできないレベルの騒音です。動画の多くは夜間のもの。夜9時、10時近くまで、訓練が続くこともしょっちゅうです。
「特にたえられない」と、男性が顔をしかめるのが、「低音による振動」です。「10分もホバリングが続くと、極端に言えば、工事現場のドリルをずっと抱えているよう。オスプレイが飛びたってもしばらく、身体が揺れているようで、体調がおかしくなってくるよ」
住民団体が飛行実態調査求める
男性は、防衛省に電話するなどしましたが、らちが明かず、知り合いからの紹介で、日本共産党の大坪国広瑞穂町議に相談しました。武蔵村山市の内野直樹市議と大坪町議は、宮本徹衆院議員とともに、男性の家を訪問。10月30日に防衛省に訓練中止と配備撤回を求めました。
男性は「なかでも腹が立つ」こととして、オスプレイの訓練の実態を「国がきちんと把握していないこと」をあげます。
防衛省の担当者は電話で、「オスプレイは、その場所では飛んでいないはず」という返答で、「動画を撮っていると言っても、飛んでないと言い張るばかり」だったといいます。
横田基地の撤去を求める西多摩の会の高橋美枝子さんは、こうしたCV22オスプレイの訓練について、「防衛省すら、実態を把握していないのが大問題。どこでどういう訓練をするのか、米軍に、もっとはっきりさせるべきだ」と指摘。「オスプレイ配備自体とんでもないが、少なくとも、訓練で住民生活に影響が出ないように、国は米軍に求めてほしい」と話します。
横田基地で、どんな航空機が、どういうルートを飛んでいるのか、調べた航跡図は8年前に東京都が作ったのが最後です。
航跡図作成以降、横田では、オスプレイ配備のほかにも、輸送機C130が最新のJ型に更新されたことや、米軍再編を受けて戦闘機の飛来が急増するなど、飛行状況が大きく変わりました。沖縄の普天間基地では、国が継続的に航跡図を調査しています。
撤去を求める西多摩の会や、公害訴訟をたたかう原告団らでつくるオスプレイ横田配備反対連絡会は10月18日、都環境局に新たな騒音調査や航跡調査を求める要望書を出しています。
また、普天間飛行場では地元の要望を受けて、国は目視で24時間体制で航空機の飛行状況を調査しています。横田での国の調査は、朝から日没までだけで、これも近く、打ち切る方針だと報じられています。住民団体からは、特殊作戦機のため、夜間の飛行や訓練が増えるCV22が配備されたもと、24時間の飛行状況調査を国がすべきだという声があがっています。
オスプレイの訓練の様子を動画にした男性は、国の対応の不誠実さに、これまで関心がなかったオスプレイについて、色々調べたといいます。
そのなかで見つけた防衛省の資料には、オスプレイは、以前から横田に配備されているC130輸送機と騒音は同程度と書いてありました。「国は低空でどこでも飛び回るオスプレイの実態を見ていない。以前は、沖縄の基地問題に関心を持っていなかったけど、いまは大変さがよくわかる。日本のどこでもオスプレイは飛ばすべきではない」と憤ります。