ご飯論法*ブラック企業*安倍政権①


 2019年は安倍政権への重要な審判の場となる、統一地方選、参院選の年です。法政大学教授の上西充子さんは、安倍内閣の不誠実な答弁を表す「ご飯論法」で、18年新語流行語大賞のトップテンに入りました。ご飯論法と安倍政権の現状、ブラック企業をなくす道筋まで、上西さんと、“ブラック企業キラー”として国会で活躍する吉良よし子参院議員(日本共産党、東京選挙区)が、新春対談で語り合いました。
(記事・荒金哲 写真・五味明憲)

上西 無視の構造を見分ける

 吉良 ご飯論法の流行語大賞トップテン入り、おめでとうございます(拍手)。5月にインターネット番組「とことん共産党」に出ていただいたとき、流行語大賞を狙っていると言われていましたよね。有言実行です。
 上西 ありがとうございます。国会パブリックビューイング(右下別項)を始めてからは、ご飯論法とあわせてダブル入賞するつもりだったんです。国会パブリックビューイングは2019年の流行語大賞をねらいます(笑)。
 吉良 期待しています。統一地方選、参院選でパブリックビューイングの運動がきっと広がりますから。

 ─ご飯論法という言葉は、上西さんのツイッター(短文投稿サイト)の投稿から生まれました。改めて、安倍政権の答弁の不誠実さを朝ごはんに例えた狙いは。
 上西 私は18年2月に、「働き方改革」法案に関連する裁量労働制のデータ問題を発見しました。これは、比較してはいけないデータを比較していて、誰が見てもおかしい。その結果、裁量労働制は法案から削除されました。
 しかし、同じ法案にあった「高度プロフェッショナル制度」となると、すごく込み入った話でわかりにくいですよね。また、安倍内閣の答弁は非常に巧妙で、表面だけさらっと見て、明らかにおかしいと思うような答弁は、多くはありません。
 ところが、こうした答弁を、どんな質問に答えたのか、セットで見ると、明らかに答えをすれ違いさせ、ごまかしています。国会で野党がいくら正当な追及をしても、不誠実にかわしてしまう無視の構造、ごまかしの構造を可視化することが大事だと思ったんです。
 吉良 本当に大事なことだと思います。私も国会に来たばかりのときは、官僚側の答弁を理解することにまず、時間がかかりました。質問したことに答えているのか、答弁の核心はどこなのかをつかまないと、ごまかされて、話をそらされてしまう。ただ、そのひどさを、国会の外で話そうとしても、複雑でなかなか伝わりません。「ご飯論法」と名づけて可視化してもらったことで、すごくわかりやすくなったと思います。
 上西 一度、ごまかしの仕組みがわかれば、どういう国会審議を見ても、「あ、またやっている」と見分けられますよね。自分でわかるようになる、ということがとても大切です。

吉良 命こそ大切、訴えたい

 ─今回の臨時国会では、入管法改定が大きな焦点になり、上西さんも法案反対の国会前行動などで訴えられました。
 吉良 入管法の審議で明らかになったのは、外国人労働者が人間として扱われない姿でした。パワハラや暴力はもちろんですし、恋愛も許されない、妊娠したら即解雇など、生きていることを否定しています。そうした問題点が噴出したのに、何の解決策も示さないまま、閉会間際に強行してしまう。それがどれだけの命や人生を破壊するか。どれだけの人を傷つけ、絶望に突き落とすことになるのか。訴えていかないといけないと思います。
 上西 今回、外国人労働者の問題が、かなりマスコミでも報じられ、知られるようになりました。そこでの政府の冷淡さは、彼らに向けられているだけでなく私たちにも向けられている。そう、多くの人が感じたと思います。
 吉良 実感します。一年くらい前だったら、街頭で「人権を踏みにじることは許されない」と訴えても、なかなか足が止まらなかった。でも、この1年、LGBT(多様な性)の人たちへの「生産性がない」発言とか、セクハラの問題、入管法の審議など、さまざまなことが起きた。人を人として大事にするということが、今の政権のもとでいかにないがしろにされているのかが見えてきて、「命こそが大切」「一人ひとりの人生に向き合いましょう」という訴えに、人がすごく立ち止まるようになっていると感じます。
 上西 今回の外国人労働者の問題はすごく大事だと思っています。苦しい状況に追い込まれた人たち、マイノリティの人たちが声を上げても、ほかの人たちが無視している限りは、なかなか変わりません。戦前の徴用工の問題とか、「慰安婦」の問題でも、政府が蒸し返すなと言っていますが、それを見過ごしてしまうことにも同じ構図があります。声を上げる人たちがいて、声にちゃんと応える人たちがいる。それが広がってこそ、社会は変わっていくのだと思います。(2面に続く)

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