教員 18時間働き、睡眠4時間 生徒 休み時間がない


学校は“異常事態”に
 教職員の長時間労働、学校のブラック職場化が大きな問題になっています。子どもたちは、どうなっているのでしょうか。現場教員の報告から、学校が異常な事態になっていることが浮き彫りになりました。
 都内公立A中学校の2年生担任、高田昇さん(37)=仮名=は教員歴12年。A中で6年目の中堅教員です。高田さんの「1日の生活」を知り、驚きました。午前7時に学校へ出勤し、退勤が午後10時15分です。1日の勤務時間が15時間15分。18時間働く日も少なくないというのです。
 高田さんがメモしたスケジュール表(別項)を見ると、授業開始の1時間半前から打ち合わせなどが連続し、生徒の朝学習(10分)。8時35分からの1時間目後の休み時間(10分)も、担任は職員室へ戻ることができません。廊下で生徒の見守りをしなければならないのです。給食後は掃除。昼休みがありません。授業を終えた後に、補充学習(20分)があります。教職員の勤務時間内にすませるため授業終了後の掃除を昼休みにあてているからです。
 午後の5時間目を終えてから退勤まで、文書、書類の作成などでスケジュールがギッシリ。午後10時半に帰宅し、12時に就寝したものの、わずか4時間後には起床です。出勤前に、4時半から朝学習の準備、教材研究と続くのです。
 高田さんの1週間の勤務時間は合計80時間。それでも、昨年度の94時間から14時間減りました。生徒の成長に直接関わらない文書作りを減らすよう努力したのです。「よかったことは睡眠時間が増えたこと。できるだけ、ストレスをためないようにしています」

自由がない生徒
 生徒たちは、どうなっているのでしょうか。高田さんが語る「中学生の1日の生活」は異常でした。8時15分から朝学習。その後、8時35分から1時間目が始まり、10分の休み時間をはさんで4時間目まで。その10分休みも「教室移動、授業準備のため」です。
 給食後は昼休みなしで掃除をし、6時間目まで授業。その後はさらに補充学習、部活動です。生徒は朝から最終下校まで「休み時間」がありません。
 高田さんは言います。「生徒は毎日、機械のようにこなすしかない。昼休みがないので図書室にも行けない。トラブルさえ起きないというのは逆に心配」
 生徒たちは下校後も解放されません。7、8割は塾や習い事に通い、帰宅後も、学校や塾の宿題です。スケジュールに追われ、何のための勉強か、見失ってしまいそうな生活。高田さんは生徒のストレスを心配していました。「飛びつくのは簡単に楽しめるスマホ。動画やアニメなどに夢中になって、引きこもりがちになってしまうのです」
 高田さんは訴えます。
 「魅力ある授業をしたいと思ったら、勤務時間がどんどん増える。もっと教員を増やしてほしい」

都民の声広がる
 都教組はこれまで毎年、教職員の長時間労働の解消を求め、教職員の定数増、持ち時間数の縮減などの是正を、都や各市区町村教育委員会に求めてきました。
 都教委は、2018年2月、学校における働き改革推進プランを策定。教職員の勤務実態調査も初めて行いました。調査では勤務時間が過労死ラインとされる週60時間を超える割合が、小学校で37・4%、中学校では68・2%。長時間労働が常態化していることが改めて明らかになりました。
 都教委の「プラン」は、週の在校時間が60時間を超える教員を「ゼロにする」ことが当面の目標。都教組の平間輝雄書記長は都教委の姿勢を批判し、次のように提案します。「目標とするなら、休憩時間を含め45時間以内に収め、持ち帰り仕事をゼロにすること。トップダウンの『教育改革』を見直し、時間に見合った業務縮減と、教職員定数の大幅増を行うことです」
 都議会でも昨年12月、共産党の尾崎あや子議員が、代表質問で、働き方改革について都の姿勢をただしました。「プラン」は抜本的改善につながらないと批判し、「教員の定数を増やす予算を編成すべき」だと要求。しかし、中井敬三教育長は、教員の定数を「適切に配置している」と答えるなど極めて消極的です。
(松浦賢三)

共産党が提言 授業数に応じ教員増を
 共産党は昨年11月、「教職員を増やし、異常な長時間労働の是正を─学校をよりよい教育の場に─」を発表。解決のために
①教員の持ち時間の上限を決め、1日4コマを目安に、必要な教員定数を増やす。小中学校の教員定数を10年間で9万人増
②学校現場での業務削減
③働くルールの確立
④非正規職員の正規化
─などを提案しています。

中学校教員・高田昇先生の1日
〈午前〉7:00出勤 7:30教室整備 8:00主任、全体、学年打ち合わせ 8:15朝学習 8:35 1時間目授業 9:25休み時間=廊下で生徒見守り (4時間目まで繰り返す)
〈午後〉12:25給食指導 12:55給食後片付け 13:00昼掃除の監督(昼休みなし) 13:15 5時間目 14:05休み時間=生徒の見守り 14:15 生活指導部会 15:05終学活 15:20補充学習 15:40生徒7人聞き取り17:00学年会 17:10管理職へ報告 17:25部活動指導
〈生徒下校後〉18:00下校指導 18:10生活指導の報告書作成 19:00伝言板作成 19:15部活動、地区大会運営書類作成 19:45いじめアンケート集計用紙作成(文書、書類作成などを15?30分単位で次々に) 22:15退勤 
〈帰宅後〉22:30帰宅 22:45夕食、テレビ 24:00就寝 4:00起床 4:30朝学習作り 5:00教材研究 7:00出勤

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