東京都が25日発表した2019年度予算案は、一般会計で過去最大の7兆4610億円(前年度比5.9%増)、特別会計・公営企業会計をあわせれば14兆9594億円(同3.6%増)でスウェーデンの国家予算を超える規模になりました。予算案の特徴について見てみました。
今回の予算規模が大きくなった主な理由は、2020年東京五輪大会の開催関連経費が、今年度の2倍弱の5330億円に膨らんだためです。
本来国が負担すべき新国立競技場の整備費の一部、395億円を計上しています。
五輪組織委員会が実施し、都が負担する「共同実施事業」1593億円は内容の詳細が明らかでなく、きわめて不透明なものです。
2019年度の予算案でも、石原都政以来続く大型開発推進の構造は変わっていません。
沿線住民の反対が強い幹線道路「特定整備路線」の建設費576億円を計上。
最高時(2016年度、836億円)の7割以下に減ってはいますが、事業の進展状況を踏まえたもので、路線の変更や見直しはしていません。
1メートル1億円をつぎ込み、大深度地下トンネルで建設する東京外環道(練馬区~世田谷区間、約16キロ)整備に、都負担分として136億円を計上しています。
6日には 練馬区でシールドマシンによる本格掘進が開始し、世田谷区でも本格掘進しようとしています。
これに合わせ、都は補正予算を組むとしており、経費がさらに増す可能性があります。
寄港の見通しもない大型クルーズ船のふ頭整備に93億円を計上。
カジノを含むIR(統合型リゾート)施設の影響調査に、今年度比で約3割増となる1000万円を計上しています。
一方、都営住宅の新規 建設は2000年度以降20年連続してゼロとなりました。
小池百合子知事が「築地は守る」という公約を投げ捨て、移転を強行した築地市場(中央区)の解体、再開発を進めようとしています。
同市場跡地を一般会計に売却する経費5423億円を2018年度最終補正予算案に計上しています。
消費税増税に伴い、上下水道や都営交通運賃など47億円の負担増を計画しています。
安倍政権が強権政治と消費税率10%への増税社会保障の切り下げを国民に押しつけるもとで、都政が都民の暮らしを守る「防波堤」としての役割を果たすのかどうかが鋭く問われています。
東京都の2019年度予算案では都民の世論と運動、日本共産党都議団の提案を反映して、都の財政力から見れば端緒的ではありますが、福祉や暮らしの施策で重要な前進があります。
共産党都議団が提案してきた公立学校体育館への空調設置を進める予算118億円を計上しました。
国の補助単価を超える事業費の3分の2を都が負担する補助率は、今年度限りとされていましたが、21%で延長します。
認可保育園をはじめとした保育サービスの利用児童数を2万1000人分増加させる方針です。
国の保育「無償化」の対象外となる世帯に対し、認可保育園、私立幼稚園などの保育料を独自軽減します。
児童虐待対策として、児童相談所の児童福祉司45人、児童心理司20人を増員します。
共産党都議団が提案してきた中小企業・小規模企業振興条例の制定を受けて中小企業の事業承継や再生を支援する事業を拡充。
多摩地域での創業を支援する拠点を整備します。
東京消防庁の救急隊6隊60人と救急車6台を増強します。
環境分野では、都が事業者を補助し、家庭に太陽光発電設備を無償設置する住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進事業(7億円)を新規にスタートさせます。
都有施設や都営住宅共用部の照明のしLED化、使い捨てプラスチック対策の予算が大幅増 されます。
共産党都議団は、2019年度予算案に対する要望の中で、太陽光発電の導入費用の負担軽減策や、都庁と都有施設のLED化、プラスチックの削減回収などの施策の強化を求めていました。
一方、都民の暮らしの厳しい実態から見れば、不十分な点も少なくありません。
認知症高齢者グループ ホームの整備予算は増額されましたが、特別養護老人ホームの整備費補助は減額されました。
国民健康保険料(税)の重い負担が問題になっていますが、新たな負担軽減策は盛り込んでいません。
都立病院の直営の見直し、地方独立行政法人化を含む経営形態のあり方について検討する経費を、前年度に続いて計上しています。
(2019年1月30日・2月2日付「しんぶん赤旗」より)