築地市場跡地(中央区)の再開発をめぐる小池百合子知事の公約違反が大きな問題になっています。都議会経済・港湾委員会は3日、小池知事が出席して一問一答の質疑が行われました。常任委員会への知事の出席は異例です。
この問題は今年1月公表した「築地まちづくり方針素案」(以後、素案)に、小池知事が基本方針(17年6月20日)で示した公約とも言える「築地は守る」「市場としての機能を確保」が盛り込まれず、国際会議場などを軸とした計画になっていたことが発端です。
共産党や自民党など6会派は、「重大な方針転換なのに、知事の説明は不十分」などとして、予算特別委員会や常任委員会への小池知事の出席と一問一答の質疑を求めました。
都民ファーストの会や公明党が小池知事の出席を拒み、本会議の開会が大幅に遅れるなど混乱した末、小池知事の出席が決まりました。
共産党のあぜ上三和子都議は、「基本方針」が都として検討して作られたものでなく、小池知事のブレーンが作ったのではないかと指摘。小池知事も事実上、認めました。
あぜ上都議は、基本政策を前回の都議選告示日の3日前に発表したことについて、都民ファーストの会の公約、基本政策として間に合わせるためだったと主張。「基本方針は都の行政方針として決定されたものではなく、ひとえに知事一人の責任において発表したもの。知事と都民ファーストの会の都議選公約に他ならない」と断じました。
その上で、基本方針で「仲卸の目利きを活かしたセリ、市場内取引を確保、発展」と明言したこをあげ、同記述が「(素案の)どこに書かれているのか」とただしました。小池知事は基本方針について「大きな方向性を示した」「一つの考え方を示した」などとごまかし、「その思いは変わっていない」と繰り返すだけで、質問に答えることはできませんでした。
あぜ上都議は「いくら後付けの言い訳をしても、方針転換という事実は変わらない。公約違反は明白だ」と批判。「都民や市場関係者に謝罪し、『築地は守る』という約束を守るべきだ」と迫りました。
あぜ上都議はまた、素案を策定した「築地まちづくり庁内検討委員会」の会議は非公開で“ブラックボックス”の中で作られたことを指摘。さらに共産党が議事録などを情報開示請求しても、3月12日までの開示延長通知が知事名で届いたとし、「オープンな場で議論する、という知事の約束と全く違う」と批判。知事が約束した築地で働きたいという仲卸業者の要望などは、「どの部分にどのように反映されているのか」とただしました。
小池知事は「丁寧に対応していくことでは変わっていない」などと強弁するだけで、この質問にも答えることができませんでした。
あぜ上都議は「築地ブランドの核は仲卸を中心とした食材の『目利きの技』。『築地の後は築地』と胸を張って言えるまちづくりをするためには、築地ブランドを育んできた仲卸をはじめ市場業者、場外、築地のみなさんの声をよく聞いて、方針を作り直すべきだ」と、強く求めました。
関連で質問に立った尾崎あや子都議は、築地市場跡地を都の市場会計から一般会計に5423億円で売却(有償所管換)する費用を、最終補正予算案に計上した問題について、「予算委員会での議論を回避したかったのではないか」と主張。「知事の納得のいく説明が行われていない」と追及しました。
尾崎都議は「有償所管換を提案するなら、『築地まちづくり方針』が決定した段階で議論すべきものだ」と主張。有償所管換の補正予算が可決されても、土地が都に引き渡されるのは五輪後で、何年かかるか分からない埋蔵文化財調査もあると指摘。さらに五輪後は土地価格が下がるとの不動産専門誌の記事も紹介。
「先の財政委員会の質疑からも、なぜ今、有償所管換を今年度最終補正予算で行う必要があるのか分からない。本当の狙いは、市場と無関係の開発をすることではないか」とただしました。
尾崎都議は引き続く知事との一問一答による質疑を求めました。
都民ファーストの会の小山くにひこ都議は、素案について「築地を守ることにつながる」と評価。公明党の斉藤やすひろ都議は、有償所管換について「どの党よりいち早く提案していた」と胸を張りました。一方、自民党の山崎一輝都議は「基本方針の変節」「重大な判断の根拠があいまい」と知事を追及しました。