医師の働き方将来が不安、7割に 入試差別など 医学生がアンケート

 全日本医学生自治会連合(医学連)は厚生労働省内で12日、記者会見を開きました。会見は「医学部入試における女性や浪人生等の不当な扱い不利による入試不正問題についての全国調査の中間報告と提言」の公表に際して行われたものです。

 現役の医学生が50医学部から2186件の回答を集計し、実態を告発しました。「男性についていき、家庭を支える妻がいることが前提の働き方」との男子医学生の声が象徴的です。
 医学生らは「医学部を卒業後、臨床医として、そのまま大学病院に勤務することを前提とした入試選考が行われている。学ぶ機会を閉ざすもの」と指摘。入試差別に怒りの声が寄せられた一方で「仕方ない」「結婚、出産などのライフイベントを諦めた。決意をして入学した」との意見が寄せられています。
 山下さくらさん(医学部5年)は「働き方に不安を抱えていると回答した学生は男性の方が多いのが意外」だとし「医学生は人間としてのライフイベントを諦めないと、医師としての仕事を全うできないと思わされている。この実態を変えられないと思わされている。考えられる時間がある学生だからこそ声をあげられる」と訴えています。
 また「入試の面接で〝なぜ女性が看護師ではなく医師なのか〟と質問された」「女子は無理だと手術見学から外された」など性差別が根強い職業意識が明らかになりました。「解剖実習で献体の陰茎に触れるよう促された」など、セクシャルハラスメントに該当するような回答もありました。
 この中間報告と提言では「一律減点の背景に医師の過重労働がある」とし、7割の学生が〝将来の働き方が不安〟と回答していることを紹介しています。
 伊東元親さん(医学部3年生)は「(過酷に)働ける人しか生き残っていけない。働ける人だけ残すのでは医師不足につながり、必要な時に診てもらえないという国民の不利益につながるのではないか」と話しています。
 別の男子大学生(医学部5年)は「産婦人科志望だが〝男なのに〟と言われて差別があるのだと驚いた。将来パートナーと対等な関係を築きたいし、いずれ子育てもしたいのにおかしい。多様な働き方や医師が必要だと思う」と語りました。

医師ら 患者の命を守るため 労働条件改善・増員が急務
 「過労死ラインを超えては、患者も医師のいのちも守れない」―医師らが参加するドクターズ・デモンストレーションが7日、労働条件の改善と医師の増員を求めて、国会内で緊急集会を開きました。
 勤務医の4割が過労死ライン(月80時間超の時間外労働)を超えて働く中、厚生労働省は医師の働き方改革に関する有識者検討会に、「地域医療を支える医療機関の勤務医」と「専門性や技能などを高めたい若手医師」の残業時間上限を過労死ラインの2倍近い「年1860時間」(月155時間相当)とする案を示したことを受け実施されたもの。全国各地から医師や医学生、連帯して駆けつけた看護師ら70人超が参加しました。
 集会では31年間診療所に勤務する医師が「休みが取れず、家族揃って旅行に出かけたこともない。在宅診療で50人位を受け持つが、在宅診療は24時間、何かあれば呼び出され対応をする。在宅診療の報酬を満額請求するには、年間2人以上在宅で看取らなくてはいけないとの必要条件も課されている」と厳しい現状を訴えました。
 他の勤務医からは「医師は業務命令で当直勤務を命じられ拒否した場合、亡くなる人が出れば業務上過失致死に問われる可能性もある」との声や、「当直や自宅待機、夜間アルバイトは残業時間にカウントされない。連続20時間勤務がある。努力だけではどうにもならない」などの告発が相次ぎました。
 「働き方改革関連法」(19年4月施行)では、医師や運輸関連業などの残業時間は5年間の経過措置を設け、政省令で別途定めるとされています。集会ではアピールを採択。①憲法、労基法違反の可能性ある政省令を、国会で十分な審議を行うこと②緊急措置として医師の労働時間管理を徹底し、過労死ライン超の医師の労働時間の短縮③原則、医師の時間外労働時間を45時間上限とし一般労働者並みにする④医師不足を解消にむけ、OECD平均にするため12万人の増員―などを求めています。
 日本共産党から小池晃、山添拓、吉良よし子、倉林明子各参議院議員が参加して連帯のあいさつを述べました。

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