「頭上にコンクリ、怖い」 28日間連続勤務も

 2020年東京五輪パラリンピックの競技会場の建設現場で、危険で過酷な労働環境があるとして、労働組合の国際組織が改善を求める報告書を16日までにまとめました。報告からは、国際的な目から見た、日本の建設現場の異常さが浮かび上がります。

労組国際組織「五輪の建設現場改善を」
 報告をまとめたのは、国際建設林業労働組合連盟(BWI、本部ジュネーブ)。大会組織委員会や東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)に送付し、改善を求めました。
 BWIは調査にあたって、主に、国立競技場と選手村の建設現場で働く40人ほどの労働者に聞き取りをしたといいます。
 報告書を出したことにを知らせる、BWIホームページの記事で、同連盟幹部は、「都や組織委、JSCが過酷な長時間労働の改善に乗りださなければ、さらに悲劇を生むことになるだろう」と警告を発しました。

 調査では、選手村で連続28日間、国立競技場で連続26日間、勤務したと話す作業員がいたと指摘。17年には、新国立競技場の建設工事に従事していた23歳の建設会社社員が過労自殺するなど、すでに過労死が起きていることをあげ、「さらなる死者が出ないように、十分な努力がされていないことを、強く懸念している」と強調しています。
 五輪準備の工事の遅れが、危険な労働の実態を生んでいることも見えてきます。

 聞き取りの場では、「強風が吹く中で、空中にコンクリートの材料がプラプラとしている状況」の作業もあり、「怖いと感じる」といった声が出されました。工程が厳しいため、リフトの使用可能台数が限られ、資材が宙につるされた下で作業をするという、「通常は考えられない」実態もあったといいます。
 報告書では、現場で身を守る安全のための装置を、作業員が自分で買わなくてはいけないなどの実態があったことも指摘しました。
 また、労働者の声を聞いて、改善する体制に不備があることも報告されています。JSCの通報窓口などはあっても、機能していないと指摘。労働組合などを通じた訴えも受理するなど、通報しやすい仕組みをつくるべきだと求めています。
 報告書について、東京都の小池百合子知事は17日の会見で、「内容を確認、調査をしている」として、「引き続き、安全管理には十分努めながら着実な工事を進める」と述べました。

日本の異常さ、浮き彫りに

 調査には、BWIに加盟する全国建設労働組合総連合(全建総連)が協力しました。
 全建総連の奈良統一書記次長は、「工期に間に合わせるための長時間労働や、安全具の自費購入などは、日本の建設現場では、ある意味、当たり前だ。それが、世界から見て、きわめて異常であることが浮き彫りになった」と指摘します。
 BWIは10年以上にわたって、五輪などの国際イベントの建設現場の実態を調査し、提言などをまとめるキャンペーンに取り組んできました。東京大会についても、2016年から提言や関係機関との協議などの活動を開始。18年9月には東京でフォーラムを開き、東京土建一般労組の参加者などから、東京五輪の建設現場の実態が発言されたといいます。
 BWIは報告で、長時間労働の規制に取り組むことや、労働者からの告発を第三者が検証することなど、11項目の改善を提案。「五輪は、日本の建設労働の遅れた実態を変えるチャンスになるべきだ。しかし、実態は逆に、問題を悪化させている」と強調しています。b

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