特別支援学校 重複障害児数
重い障害がある子どもたちが学ぶ特別支援学校の「重複学級」を都が違法に少なく算定し、子どもたちの学ぶ権利を侵害している実態が初めて国会で明かになりました。共産党の山下芳生参院議員が5月21日の文教科学委員会で追及したもの。東京では、こうした異常な事態が20年来、続いています。
子どもの学ぶ権利侵す
特別支援学校(小中学部)の学級編成は障害が1つの場合、1学級6人の通常学級。2つ以上の重複障害児の場合は重複学級として3人で編成されます(義務標準法)。
養護学校が義務化されて40年。特別支援学校の在籍者数は年々増え、中央教育審議会も重複障害者の割合が「増加傾向にある」(2016年12月)と認めているほどです。山下議員は、千葉県立と都立の肢体不自由校(小中学部)を独自に調査した結果を示しました。どちらも知的障害がある重複障害の子どもの割合が約9割。それに応じて重複学級に在籍する子どもの数も千葉が約9割ですが、都立は約3割しかありません。
山下議員は、全国的にも肢体不自由児校の場合、重複障害児は全体の約9割、重複学級に所属する子どもの割合も約9割あると指摘。「東京の割合は、きわめて低く異常」と追及しました。
山下議員の調査では、都立肢体不自由児校の場合、重複障害児1167人(92.4%)のうち、重複学級に入っている子どもは411人。しかし、丸山洋司審議官は、都から受けている報告では重複学級の児童・生徒数は594人だと明らかにしました。
都の報告は、411人に分教室や訪問学級の在籍者など183人分を上乗せした数です。重複学級に入っている重複障害児は半分に満たなく、残りの子どもたちは、通常学級に回されていることが分かりました。これについて、教育庁の担当課は「(重複学級数は)各校長からの申請にもとづき、個々に判断して決めている」と説明しています。
重複障害児が1学級6人の通常学級に回されたらどうなるのか。1学級3人の重複学級であれば、絵本を読むときでも一人一人に絵本を見せ、目で追わせることができます。しかし、6人の通常学級では難しく、手厚い教育はできません。
取り上げ嬉しい
山下議員は、重複障害学級の対象となる子どもたちを「都は正しく認定していないのではないか」と追及しました。これに対して柴山昌彦文科相は「重複のある児童・生徒を単一障害と認定し、適切な指導や必要な支援が行われていない場合があるとすれば問題」と答え、重複障害児への手厚い教育を強調しました。
この20数年来の、都立特別支援学校に在籍する子どもの数と、重複学級の数をみても極めて不自然です。在籍者数が6千人台から1万2千人台へ、2倍に増えているのに、重複学級数は563(1994年)から579(2018年)とほとんど変わりません。しかも、一貫して560、570台です。
学校関係者からは「重複学級の数は始めから決まっていて、校長が申請しても認められない」などの声もあがっています。山下議員は、こうした疑いについても調査するよう求めました。
重複学級については、共産党都議団や保護者たちも重複障害児の実態に合わせた学級編成をするよう一貫して求めてきました。「障害のある子どもたちの教育・生活をゆたかにする東京の会」代表の三原瑞穂さん(51)は「ようやく国会で取り上げてくれてうれしい。実態にふさわしく重複学級を増やしてほしい」と強く求めています。
教育のリストラ
東京都障害児学校教職員組合の板原毅執行副委員長長は「障害の重い子どもたちが学ぶ、重度・重複学級が実態通りに設置されていないため、子どもたちが適切な教育を受けられない状況が何年も続いている」とのべ、「都教委の姿勢がコストと効率を優先して、教職員を増やさずに一貫して人的削減を最大の柱にした教育のリストラ方針が大きな原因」と指摘しています。