日本共産党の参院選政策「消費税増税の中止 くらしに希望を―三つの提案」で掲げた「すべての学生を対象に、大学、短大、専門学校生の授業料を、すみやかに半分に値下げし、段階的に無償化をはかる」政策について参院文教科学委員会に所属する吉良よし子議員に聞きました。
―若者の反応はどうでしょうか。
≪吉良≫すべての大学の学費を半分にしようという話はすごく響きます。街頭でも反応がいいですね。
東京・池袋駅前で聞いていた若い人たちが、大きく手を振ってくれました。支援の対象に条件を付けてやるより分かりやすい。「半額はいいね」という反応は強いです。
今の学生は高い学費のもとで生活苦にあえいでいます。東京私大教連の調査によると、仕送りを受けている学生の家賃を除いた生活費は1日677円となっています。
国会の参考人質疑で大学の先生は「私のところにいる学生なんかは『今日は1円も使わなかった』と言っている。そういうことを議員の皆さんに認識してもらいたい」と発言していました。そのぐらい困窮し、毎日生活費を節約しながら、学生は学んでいるのです。
さらに、消費税に頼らない財源の話―大企業と高額所得者への税金などで7兆円の財源ができる。
それに対して、すべての大学・専門学校で学費を一律半額にするのに必要な金額は1・6兆円―と言うと、「ほー」という反応がかえってきます。説得力のある提案で、希望を感じてくれていると思います。
政府がやろうと思えば、すぐにでもできる。だから、一緒に実現しましょうと言うと、非常に反応がいいし、若者の要求とかみ合っていると感じています。
―政府は、成立した大学等修学支援法を「無償化法」と言っています。
≪吉良≫無償化とは言えない法律ですね。柴山昌彦文科相が「この法案で学費を値下げするものではない」「法律には『無償化』という言葉は用いていない」とはっきり答弁したのには驚きました。
学費を値下げしないのに無償化というなんて“偽りの無償化”です。実際は、私立大学は5年連続で授業料の値上げです。国立大学の一部が、10万円の授業料値上げを発表しています。
無償化というのであれば、こういう値上げをさせないというべきではないかと安倍晋三首相に聞きました。
安倍首相は「各大学が決めることだ」と言い、値上げを否定しませんでした。無償化という言葉を使わない、学費の値下げもしない、それどころか値上げも認める。政府の“無償化”は全く看板倒れです。
今回の法律で無償化の対象になっているのは一部の学生です。現状の進学率を前提にすれば1割程度しか対象にならないということを国会で明らかにしました。
つまりは9割の学生は高い学費のままです。
しかも支援の財源は消費税増税分と法律の中に書いてあるのです。これでは対象を拡大しようとすれば、増税が避けられません。
消費税を財源にしている問題で言えば、そもそも学生の生活に重い負担になることは明らかです。それは支援の対象になる人もならない人も関係なくすべて学生の負担になります。
消費税は逆進性が強い税金です。だから、支援が必要な低所得の世帯を支援すると言いながら、低所得世帯ほど重い負担になる消費税を財源にすることの大きな矛盾です。
―政府の提案と考え方と共産党の考え方の違いは。
≪吉良≫安倍政権には、教育を受けるという当然の権利を実現させるという考えがありません。
与党の議員からは、とにかく成績優秀な人たちを支援する制度設計を今後考えていくべきだなどという話も出ています。
国に役立つ成績優秀な人材には投資する。政府がお金を出す以上はきちんと成果をだせというのが本音ではないでしょうか。
とにかく稼げる会社に就職し、社会で生産性をあげなさいというのは教育とは無縁の発想です。
共産党の提案は、当たり前の学ぶ権利の保障です。国際人権規約で権利の問題として漸進的無償化ということがうたわれています。
その立場と共通する提案です。日本政府は、人権規約を批准しているのですから、権利を実現させるために、学費を値下げし無償化をすすめる責任があります。その責任を放棄しているのが安倍政権です。
すぐに学費を半額にして、段階的に無償化をめざすという道筋こそが、真の無償化を実現する道です。
(2019年6月5日付「しんぶん赤旗」より)