理不尽さ訴えたクルミさん 池川・原両都議と語り合う
高校生の声が東京都政を動かしています。
「ブラック校則」が社会問題になる中で、都立高校でも理不尽な生徒指導によって生徒が傷つく事例が、共産党都議団に寄せられています。
6月の都議会では、池川友一都議が校則について質問し、教育長が「生徒の意見や保護者の意識、社会状況等をふまえ、適宜、校則の見直しを行うことが必要」と一歩前に進む答弁をしました。
都立高校で「おかしい!」と声を上げ続けたクルミさん(仮名)、相談を受けた原のり子都議、質問をした池川都議で改めて語り合いました。
「授業を受ける」権利まで奪われ
池川 生まれつきの髪の色が学校の基準に合わないから黒く染めろ、そうしないと授業を受けさせないと言われ、これはおかしい、と声を上げたクルミさんの事例を質問で取り上げたんです。今日は報告も兼ねてきました。
クルミ よろしくお願いします。私は、この3月に無事に卒業しました。
原 ちょうど1年前にお父さんを通じて相談が寄せられ、3年生になったばかりのクルミさんに会って話を聞いたら、もうびっくりでした。クルミさんの髪は普通に黒くて染めてもいないのに、「校則違反だから黒く染めてこい」と生活指導の先生に言われた。クルミさんが「校則には髪を染めてはいけないと書いてあるのに、染めるんですか」と聞いたら、授業も受けることができなくなってしまったんです。
クルミ 最初から話してもいいですか。
池川 ぜひ。
クルミ 実は、入学式でひっかかりました。美容室に行ったら、「いま髪を染めても、色が落ちたら茶色くなってしまうから、染めない方がいい」って言われました。仕方がないから15センチくらい髪を切って再検査を受けました。結果は「ダメ」。美容室でその話をしたら、名刺の裏に「茶色くなるから染めなかった」と書いてくれて、それを学校に出しました。
原 生まれつきの髪の色を染めてこいというのは本当に理不尽ですが、このときは、これで終わったんですよね。
クルミ そうです。学期ごとに頭髪検査があるんですけど、3年生になるまで何も言われませんでした。
池川 3年生の始業式後に行われた検査で、また問題にされたんですね。
クルミ はい。「黒く染めるか、切るかしないと学校に入れさせない、授業も受けさせない」というようなことを言われました。
池川 基準はどうなっているんですか。
クルミ 黒から茶色まで何種類かの髪の毛を並べたスケールがあるんです。
原 いちばん黒い3番からいちばん茶色い15番まで13種類の髪の毛が並んだスケールでした。
スケール近づけ髪の色チェック
クルミ そのスケールを生徒の髪に近づけて検査します。先生が3人1組になってやるんですよ。3番、4番はオーケーで、私は4・5番くらいだから「ダメ」なんです。生まれながらの髪の毛がなぜ校則違反になるのか、さっぱりわかりません。生え際のいちばん黒い部分を見ないで、ちょっと色があせた真ん中から毛先の方を見るんです。
池川 なんのために3番、4番じゃないといけないんですか? 就職のためですか?
クルミ それもですけど、何度も「決まっているんだから」っていわれました。
池川 校則に「3番、4番以内」って書いてあります?
クルミ 書いてないです。「生徒心得」(校則)には、「本校では、服装頭髪指導を実施している。検査で違反と判定された場合は、指定日までに改善すること」とあって、「パーマ・染色・脱色および特異なヘアスタイル(ツーブロック・モヒカンなど)は禁止」と書いてありますけど…。
池川 その基準が、頭髪スケールですか。染めていない自分の髪の毛であっても、基準に合わなければ違反と判定するなんて、明らかにおかしいですよね。
茶色っぽい瞳に「カラコン外せ」
クルミ 茶色っぽい瞳の子がいたんですけど、「禁止されているカラーコンタクトをしているだろう。はずしなさい」っていわれたそうです。カラコンなんかしていないのに。
原 高校生のクルミさんが立派だったのは、おかしいと思ったことを口にして聞いたところですよね。「髪を染めちゃいけないと書いてあるのに、私は黒く染めてこなければいけないのですか」って。本当にそう思います。
池川 先生はなんと?
クルミ 「染髪と黒染めは違う」って。
池川 合理的な説明になってないですよね。生徒が発する「なぜ?」に答えられない。
家族のみんなが応援してくれた
クルミ 正直に言うと、大人ってなんなのって思いました。「先生の髪だって白いじゃん」って言っちゃったし…。「白は別だ」って言われました。
原 これに対する学校の対応も課題を残したんですよね。この問題をきっかけにして、「特別指導」ということになって、授業も受けることができませんでした。別室で毎日、「特別指導」を受けるんです。その中身は、髪を染める問題について話し合うということではなくて、反省文を書く。その反省文も、なぜこの学校に入ったのかということなどを書く。
池川 授業を受けさせないのは、かなり問題がありますね。
クルミ 私も、すごくイヤでした。でも、家族みんなが応援してくれて…。
原 家族のLINE(ライン)があるんだよね。
クルミ 学校のことは家で話をしていたし、「こんなことがあった」ってLINEに書くと、お父さんもお母さんもお姉ちゃんも、「えっ、ひどい!」って。だからなんでも相談していました。
原 相談を受けて、直ちに話し合いをしました。そのなかで、学校側もクルミさんに謝罪して、黒染めの指導は撤回されました。
「意見尊重する」知事答弁あった
池川 印象深いのは、クルミさんが声をあげ続けたことです。その声が事態を動かす大きな力だった。都議会の質問の中で、子どもの権利条約は、子どもを権利の主体として位置づけていることを強調しました。国連子どもの権利委員会からは「子どもの意見が正当に重視されることを確保する」ことが勧告されているんです。そこを知事に問うたら、「子どもは…あらゆる場面において権利の主体として尊重される必要がございます…意見を尊重するとともに、子どもの最善の利益を実現するということは重要であります」という答弁が返ってきました。教育長も、生徒の意見を聞いて校則の見直しを行うことが必要、と言いました。
クルミ そうなんですか。
池川 これだけだと普通のことに聞こえますが、校長が決定するの一点張りだったこれまでの対応から考えると画期的なことなんです。この質問もきっかけにして、子どもたちが学校を良くするためにもっと声を上げてほしいなと思います。実際に質問を聞いた人からは「高校生がこうして声を上げていることは希望だね」という感想がいくつも寄せられています。
吉良よし子参院議員が追及 国政都政で連携
原 国会では、吉良よし子さんが「ブラック校則」の問題を取り上げ、文部科学大臣から「(校則は)絶えず積極的に見直す必要がある」「児童生徒や保護者が何らかの形で参加した上で決定するということが望ましい」(2018年3月29日、参院文教科学委員会)という答弁を引き出しています。国政と都政が連携して、子どもたちの権利が尊重されるようにしたいですね。
クルミ そういえば、他にも生理が重くておなかが痛いのに、泣きながらプールの授業にでなければいけない子もいました。いろんな声をおとなの人たちには聞いてほしいと思います。
原 「おかしいよね」と現場の先生とも一緒に考え合いながら、それも変えていかなければいけないですね。私たちもすごく勉強になりました。ありがとう。
クルミ こちらこそ。ありがとうございました。
(2019年7月19・20日付「しんぶん赤旗」より)