西東京市で、子どもたちのどんな相談にも耳を傾ける「子ども相談室」が8月1日にオープンして、1カ月を迎えています。昨年9月に制定した「西東京市子ども条例」を生かし、子ども一人ひとりの思いを大切にして、一緒に解決策を考える相談室です。 (荒金哲
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条例生かし権利守るため
子ども総合支援センターなどが入る複合施設「住吉会館ルピナス」の2階にある、子ども相談室のドアを開けると、「子どもたちに大人気」という、市のマスコットキャラ「いこいーな」の人形が迎えてくれます。
ゆったりとした空間に並ぶ、相談カウンターと個室、電話相談のための机とパソコン。パーティション(仕切り)は落ち着きのある緑色で、本棚には漫画や百人一首もあります。
相談体制のサポート役の子育て支援課子ども相談係の岡田光子さんは、「相談を前に緊張している子どもが来たとき、少しでも落ち着けるようにと考えました」と笑顔で話します。
制定は全国34番目
相談室の大きな特徴は、昨年9月に、市議会で全会一致で可決した、「西東京市子ども条例」に基づいていることです。条例では、市の第三者機関として、いじめや虐待などの権利侵害の相談を受け、救済につなげる「子どもの権利擁護委員」を置くとしており、そのための相談窓口が子ども相談室です。
権利擁護委員は弁護士、公認心理士など、専門的な知識のある3人で構成。相談を直接聞く、相談・調査専門員は、元教員や、児童相談所の元職員など3人が選ばれました。
電話などで受けた相談の内容は、メールですぐに権利擁護委員と共有します。子どもを権利の主体と位置づけ、「子ども自身がどう解決したいか、気持ちに沿った解決策を一緒に考える」ことを目指しています。
子ども条例制定は、西東京市によると全国で34番目。都内でも条例に基づく相談室が複数あります。西東京市では先進的な事例として、世田谷区の相談室を参考にしました。
岡田さんは、「どんな小さな相談でも、じっくり聞くことを心掛けています。小さなことに見える相談の裏に重大なことが隠れていることもあります。誰かに言いたいけど、誰に言っていいかわからないと悩む子どもが相談できる場にしたい」と話します。
クラス投票で愛称
西東京市の子ども条例は、制定過程で出された、子どもたちの「自分たちにも、わかりやすい言葉にしてほしい」などの意見を受け、全体が「ですます調」で書かれています。
14の段落からなる前文で、「子どもが失敗や間違いをしても、やり直し、成長できるまち」など、条例の目指すことを伝えています。
市では、小学校1~3年生版、4~6年生版、中学生・高校生版、一般用の4種類で、条例を説明するパンフレットを作り、市内の各校に配布しました。子ども相談室と権利擁護委員の愛称を、小学生のクラス投票で決める取り組みも実施中です。
日本共産党市議団の保谷清子市議は、「長年、求めてきた子ども条例がやっと制定された」と喜びます。
子ども条例は、2009年に共産党も与党だった坂口光治市長(当時)が市長選で「子どもの権利条例制定」を公約し、条例内容の「要綱」を作成するところまで進みました。ところが、自民党が市議会で、条例化を批判し、関連の予算が凍結されてしまいました。共産党市議団は、繰り返し条例の制定を求めてきました。
保谷市議は、「市議団は、条例を理念に終わらせないために、(権利擁護委員のような)子どもの権利を守る仕組みが必要だと求めてきました。条例を生かし、子どもが大切にされる街をつくる取り組みを充実させていきたい」と話します。