東京都港湾局が2017年度にみずほ総研に委託した臨海副都心青海地区北側開発(13・7ヘクタール)に関わる調査をめぐり、当初の調査委託項目にはなかったカジノを含む統合型リゾート(IR)を報告書に盛り込むよう、発注後に大幅変更を指示し、カジノ優先の報告書を作成させていたことが24日、「しんぶん赤旗」の取材で明らかになりました。
「しんぶん赤旗」が港湾局に情報開示請求を行い、2017年度の「臨海副都心青海地区北側開発に関する調査委託報告書」(2018年3月)と調査委託の起案書、委託業者との打ち合わせ記録簿などを入手しました。
同局は調査委託(2017年12月)の際に、カジノなしMICE(国際会議場、展示場)の開発パターンや経済波及効果、事業採算性の検証、完成予想図の作成を指示していました。
起案書に添付された調査委託概要図には「IRなしMICE」と明記。都が示した3つの開発パターンの案はいずれも「IRなしMICE」を柱に、研究開発・人材育成、エンターテインメントを組み合わせており、特記仕様書にもIRの文字はありませんでした。
ところが、報告書はカジノを最優先し、
(1)統合型リゾート(カジノ併設)
(2)MICE拠点(カジノなし)
(3)観光・エンターテインメント拠点
(4)産業・人材育成拠点
の4案を示しました。(1)案は31階建て最高級ホテルに1万5000平方メートルのカジノを含む世界最大級のIRを整備し、建設費は最大3,527億円と試算しています。
なぜ委託と異なる報告書になったのか―。
その謎は、「しんぶん赤旗」が入手した港湾局の内部文書で判明しました。
同局とみずほ総研の第1回打ち合わせ記録簿(2017年12月15日)には、「国のIR推進会議の議論等を踏まえ設定する」と書かれています。初回打ち合わせで統合型リゾート(カジノ併設)を含めるよう調査内容の変更を指示していたのです。
港湾局は「しんぶん赤旗」の取材に「(開示)文書に書いてあることがすべて。幅広く検討した中で(IRが)開発パターンに入った」と変更指示を認めました。
東京都が2012年度以降、カジノ・MICE誘致を想定してひそかに調査を行い、カジノ候補地を臨海副都心青海北側地区に絞り込むなど、6,566万円を支出し11件の調査報告書を作成していたことは、「しんぶん赤旗」報道(6月3日付、9月30日付)で明らかになっています。
都港湾局とみずほ総研の打ち合わせ記録簿からは、同局が報告書にカジノ誘致を盛り込ませるために、さまざまな注文を付けていたことがわかります。
第2回打ち合わせ(2018年1月10日)では、開発4パターンの検討中、カジノ併設案の記述が38行中23行と6割を占め、第4回(2018年3月1日)でもNOP区画にホテル・カジノを配置するよう指示していました。
調査委託内容の大幅変更には、都の関係者からも疑問視する声が上がっています。
「臨海副都心のIR調査は、表に出さない前提で行ってきた。カジノなしMICEは事業採算がとれず、IRとパッケージにしないと成立しない。わざわざカジノを含まない条件で調査委託をしたのに、なんで途中で変更したのか疑問だ」。都の幹部は「しんぶん赤旗」記者にこう語りました。
都財務局元幹部は「調査委託をする時は調査内容を抽象的にするのが通常だ。ところが港湾局は正反対で、“IRの調査はやらなくていい”と極めて具体的な条件で委託した。発注後にIR付きに変更したのはおかしいし、委託内容の重大な変更に該当する」と指摘します。
東京都は今年9月、国が行ったIR立候補の自治体意向調査に対し、「検討している」と回答しています。
都港湾局は「IRなし」の調査を委託したのに、その直後にカジノを中心とする開発パターンを前面に打ち出すよう大幅変更させていたことは、「IRなし」が偽装であった可能性を示すもので大問題だ。
しかも、報告書の内容はIRを中心にした案のはずなのに、ハコモノを提案しているだけで、中身の検討がなくスカスカだ。
カジノはたくさんの人をギャンブル依存症にし、犯罪の温床になる危険性も極めて高いという重大な問題があるのに、報告書はそのリスクや都の対策などは全く触れていない。都民に隠れてカジノ誘致では、「都民ファースト」ではなく「都民ラスト」だ。
(2019年10月25日付「しんぶん赤旗」より)