経済産業相を辞任した自民党の菅原一秀衆院議員(東京9区=練馬区西部)が主催した政治資金パーティーで、同氏の秘書が選挙区内の町会長や自治会長に「御招待」と記したパーティー券を無料で配布していたことが複数の関係者の証言で分かりました。
こうした行為は、選挙区内の有権者への寄付にあたり、公職選挙法に違反する疑いがあります。
「しんぶん赤旗」は菅原氏の選挙区内の町会関係者から2015年11月25日に新宿区内のホテルで開かれた「すがわら一秀君と明日の日本を語る会」のパーティー券の写しを入手しました。券面には「御招待」と強調されています。
また、日時や会場などが記された「ご案内」には「会費/¥10000」と書かれた上に二重線が引かれ「御招待」と書かれています。
受け取った町会長の妻は「詳しい説明はなく、秘書は名刺を差し出すと『町会長の皆さまにお配りしているので、よろしくお伝えください』と、パーティー券や申し込み用のはがきが入った封筒を手渡した」と証言します。
同パーティーの発起人には、自民党総裁として安倍晋三首相の名前があります。菅義偉官房長官、麻生太郎副総理、自民党の佐藤勉国会対策委員長(当時)らが「ゲスト」として出席。菅原氏は、自身のフェイスブックに出席者は2千人を超えたと投稿しています。
パーティーを開いた「新時代政経フォーラム」は、自民党の菅原一秀前経済産業相が代表を務める資金管理団体です。
2015年分の政治資金収支報告書では、同パーティーで2,482万5千円の収入があったと記載されています。
無料招待で出席した人によると、会場ではビュッフェ形式の料理や酒類が出され、記念品として菅原氏の名入りの時計を持ち帰ったといいます。
菅原氏のブログなどによると、2015年以降も毎年11月に同様の政治資金パーティーが開かれています。
取材に応じた選挙区内のある町会長は「昨年も菅原氏の秘書から『御招待』という形でパーティー券を受け取った。枚数は1枚。町会長として毎年、出席している」と明かします。
別の町会長は「菅原氏の秘書がパーティー券を持って自宅に来ることが3年前まで2~3年ほど続いた」として、次のように証言しました。
「秘書は町会・自治会名簿を片手に訪問している様子で『町会長の〇〇さんですね』と確認した上で封筒を手渡した。開封したら金額の上に二重線が引かれて『御招待』と書いた案内状が出てきたので、おかしいと思って出席しなかった。2017年の衆院解散の直後には、菅原氏の事務所から『よろしくお願いします』という投票依頼の電話もかかってきた」
公選法は、議員や候補者の後援団体が「選挙区内にある者に対し、(中略)寄付をしてはならない」(第199条の5)と定めています。違反した場合は「50万円以下の罰金に処する」(第249条の5)としています。
候補者と関係が深いものが買収など一定の選挙違反をして有罪となった場合、連座制が適用され、当選が無効となることもあります。
東京都選挙管理委員会の担当者は「政治家の後援会などが主催する政治資金パーティーに選挙区内の有権者を無料で招待する行為は、提供する飲食物や記念品が寄付にあたる」としています。
本紙の問い合わせに、菅原氏の事務所は回答しませんでした。
(2019年11月6日付「しんぶん赤旗」より)