共産党宮本氏「代わる病院ない」撤回を

厚労省が病院再編リスト 自治体、関係者が猛反発

 厚生労働省は9月末、再編統合の検討が必要と評価された424の公立・公的病院のリストを突然、公表しました。東京都内では10の病院が含まれています。どの病院も地域医療を担うかけがえのない役割を果たしており、地元自治体や医療関係者から「地域の実情が分かっていない」との猛反発を招いています。(長沢宏幸)

地域密着の奥多摩病院

 「こういう形で評価されると心が折れてしまう」。対象にあげられた病院の一つ、奥多摩病院(奥多摩町)の井上大輔院長は10月28日、懇談に訪れた共産党の宮本徹衆院議員に、リストにあげられたことを知った時の心情を、こう語りました。
 奥多摩病院は同町で唯一の中核医療施設として、地域に密着した医療を365日、24時間提供しています。奥多摩町は23区の約4割にあたる広大な面積を有し、そのほとんどが山間地。約5000人が暮らしていますが、高齢化も急速に進み、通院が困難な町民も多くいます。

 井上院長が「この病院の必要性は身にしみて感じている。この病院に代わる病院はないという自信があります」ときっぱり語るように、同病院では年間400回の往診を行い、訪問看護も1700回、町中心部から離れている2カ所の集落に診療所も設置しています。
 他にも登山やキャンプなどに訪れる観光客のけがや病気にも対応。井上院長は「常勤医師は4人だが、多種多様な医療ニーズに対応している。(厚労省の)基準でははかれない存在意義、価値がある」と強調します。

孤立地区に保健師

 台風19号では道路が崩壊し、日原地区が孤立しました。同病院では、保健師が山道を通って全戸を訪問。薬の状況などを聞き取り、他市の病院とも連携して、他院の患者も含めて薬を処方して届けています。井上院長は「災害時に的確な対応ができるのも、日頃からの保健・医療・福祉の連携の成果」と語ります。
 高度医療や救急搬送で連携する隣の青梅市立総合病院までは、車で約40分。「町の患者の生活を見ながらの診療は他病院では無理。高度医療を担う病院と役割分担し、協力していくのが良い」と話しました。
 懇談には、大沢ゆかり奥多摩町議、井上たかし青梅市議らが同席しました。

宮本議員が追及

 宮本衆院議員は、この間、奥多摩病院のほか、村山医療センター(武蔵村山市)、台東病院を有する台東区を訪問して聞いた実情をもとに、衆院厚生委員会(10月30日)で論戦、リスト撤回を求めました。

 宮本議員は、「話を聞けばきくほど、地域住民、国民になくてはならない病院だということがよく分かった」とのべ、各病院のかけがえのない役割を紹介。再編統合されれば、国民に必要な医療が提供できなくなりかねず、病床削減数ではなく、現場の実態と患者のニーズから出発すべきだと強調しました。
 加藤勝信厚労相はリストについて「全国一律的に、しかも、ある時期のデータをベースとしている」とし、「地域にとってなくてはならない医療機関も(リストに)入っている」と認めました。宮本議員は「なくてはならない医療機関が入っているようなリストを出すこと自体、間違い」とのべ、リストの撤回を求めました。 
 加藤厚労相は「この病院を廃止しろといっている訳ではないが、そういうふうに受け止められたことは事実」などと弁明に終始しました。

知事会が遺憾

 全国の知事会長、市長会長、町村会長は連名で「極めて遺憾」とする声明を発表(9月27日)。「国民の命と健康を守る最後の砦である自治体病院が機械的に再編統合されることにつながりかねない」と指摘しています。

「不条理に憤り」

 済生会中央病院(港区)の高木誠院長は、「患者さんや職員の不安を大きくし動揺させるような、また風評被害の原因ともなる突然の病院名公表という厚労省の今回のやり方には断固抗議」するとの見解を発表(10月11日)。同病院が地域医療支援病院、救急救命センター、災害拠点病院などに指定され、無料低額診療などの社会福祉事業にも取り組んでいると紹介。「ある日突然、厚労省から再編、統合の対象として指定されたことの不条理に憤りを感じます」とのべています。

再編統合推進するな 共産党都議団が知事に要請

 日本共産党都議団はこの問題で25日、都民が必要とする医療を守る立場で、厚労省の「分析結果」の撤回を国に求めることや、都として「分析結果」に基づく再編統合などを推進しないよう、小池百合子知事に申し入れました。
 都福祉保健局の矢沢知子医療政策部長は「(医療機関に対して)都から減らせと言うことは考えていない。(分析結果は)適当ではない」と答えました。

厚生省の再編統合リスト

リストは地域医療構想に関するワーキンググループ(9月26日)で配られた参考資料、「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」で示されました。公立・公的病院の3割に当たる424病院が「統合再編の議論が必要」として実名を公表。選定した基準は、がんや救急など診療領域で①他地域と比べ実績が少ない②近隣に同程度の実績を持つ病院があるーという地域の実情や地域住民のニーズを考えない機械的基準によるものです。背景に2025年までの目標達成に向けて、病床削減を強引に進める安倍政権の姿勢があります。

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