教員の過労による休職や痛ましい過労死があとをたちません。
教員の長時間労働の是正は日本の教育の現在と未来のかかった国民的課題です。
公立学校の教員給与特別措置法は、4%の教職調整額の支給と引きかえに労働基準法第37条の割増賃金の規定を適用除外し、残業代を支給しないとしています。それが時間外労働を規制する手段を奪い、際限のない長時間勤務を引き起こしてきました。
改定給特法案はこのような給特法の枠組みには一切手をつけず、公立学校教員に1年単位の変形労働時間制を導入するものです。
同制度は恒常的な時間外労働のないことが前提ですが、文部科学省の2016年の勤務実態調査では、公立学校の教員の時間外勤務は小学校で月59時間、中学校で月81時間に及び、恒常的な時間外労働がまん延しています。
タイムカードを導入した学校現場では虚偽の時間把握がまん延し、「目標達成ができなくなるので5時半には打刻してくれ」と管理職に言われているなど、全国各地からの訴えに対し、文部科学省は実態すら把握していません。
正確な勤務時間把握すらできていない現状をみれば、制度導入の是非を議論できる段階でないことは明らかです。
変形労働時間制の導入は長期にわたり8時間労働の原則をあって無きものとする重大な労働条件の不利益変更です。
法案で、地方公務員である教員に労使協定さえ結ばずに条例で変形労働時間制の導入を可能とするのは、労使対等原則を踏みにじるものであり、教員の労働者性を否定するものです。
委員会での参考人質疑では、現職教員から「公教育の質がもはや保証できない」との陳述がありました。
学校現場は日々、子どもや保護者など人を相手にし、予期しえない予測不能な事態・事故も起こりえます。
あらかじめ労働日、労働時間を定め、その後は変更ができない変形労働時間制の導入は不可能です。
制度導入により校長、副校長、教頭など管理職も負担増となります。
休日を取りたくても取れないほど業務が増え続けているのに、文科省には全国学力テストや教員免許更新制、行政研修などを削減する意思のないことも明らかになりました。
変形労働時間制でなく、多忙化の原因となっている業務を文科省が削減し、給特法を抜本改正し、教員を抜本的に増員して学校の異常な長時間労働をなくすべきです。
(2019年12月5日付「しんぶん赤旗」より)