東京都教育委員会は10月、廃止(閉課程)を打ち出していた都立高校夜間定時制の立川(立川市)、小山台(品川区)両校について2021年度までの生徒募集継続を決めました。
4年前の廃止計画決定後も存続を求めてきた保護者や卒業生、元教師、住民らの粘り強い運動の成果です。
都教委は2016年2月、都立高校改革推進計画を決定。夜間定時制の小山台、立川、雪谷(大田区)、江北(足立区)の4校廃止を打ち出しました。
4校関係者は各校ごとに「廃止に反対する会」などを結成。連携して2016年に2万4,579人、2017年にも3万506人の署名を都教委に提出。しかし、雪谷と江北の2校は募集が停止されました。
2019年3月から立川、小山台の「会」では新署名に着手。分かりやすいチラシとともに同窓会の会誌に折り込み駅頭宣伝も行うなどして立川で1万2,553人、小山台で1万362人が集まりました。
「250人の生徒が在籍し、82年の歴史と伝統のある母校をなくさないで」(立川・卒業生)
「外国につながる生徒の日本語指導が手厚く、多文化共生を体現しているかけがえのない学校」(小山台・住民)
などの声が上がりました。
立川高校定時制の廃校に反対する会の河合美喜夫さんは、「なぜ閉校がこの4校なのか、合理的な説明がないことが大問題です」と話します。
これまで「1クラスで10人以下が2年連続したら閉課する場合がある」という基準がありました。
しかし、4校は、「勤労青少年が減少し、応募者が減っている」など一般的理由だけでした。
4校の選定は検討委員会などは設置されておらず、選定経過を示す公文書もないことなどが判明しました。
「基準なしの選定を許せば、学校の統廃合などで勝手な論理が持ち出される」―この思いが、粘り強い運動の核になりました。
日本共産党都議団は都民の合意もなくまともな選定理由もないと追及し、定時制高校存続を求めてきました。
4つの定時制高校には、都立の“進学校”が併置されています。
元高校教員で「都立高校のいまを考える会」の佐藤洋史さんは、「都の『進学重視』の教育行政と照らし合わせてみると、“進学校”としての実績を挙げるために定時制をなくそうとしているようにもみえる」と指摘。
「立川には今年も50人が入学しています。それを全日制と定時制が同じ学校にあるのは問題だという理由で、定時制を廃止することは教育の論理になじまない」と指摘します。
立川定時制卒業生で反対する会呼びかけ人の男性(労働総研理事)は、閉校の話に「貧乏人は学ばなくていい」というメッセージを感じたと話します。
家が貧しく進学をあきらめていた男性が担任に話したところ「夜間定時というものがありますよ」と紹介され、進学を決めました。
実際、進学しないと言っていた中学3年生が、存続を求める会の「夜間定時制で高校資格を取ろう」というビラを見て、こんな学校なら私も通いたいと進学を決意した事例が生まれています。
河合さんは「定時制という学ぶ機会があると知らせる宣伝を、教育委員会がもっとやるべきです。今回の成果を確信にさらに運動を広げて、閉校計画を撤回させるまで運動を続けていきます」と話しています。
(2019年12月18日付「しんぶん赤旗」より)