東京都が1月24日発表した2020年度の一般会計当初予算案の総額は、7兆3540億円で、東京五輪・パラリンピックの経費などで過去最大となった前年度に比べ1070億円(1・4%)減ったものの、過去2番目の規模となりました。特別会計、公営企業会計と合わせると15兆4522億円(前年度比4928億円、3・3%増)です。都の総予算はスウェーデンの国家予算を超え、ノルウェーに迫る規模です。予算案は2月19日開会予定の都議会定例会で審議されます。
(長沢宏幸)
過去2番目7兆3540億円
夏の都知事選を前に小池百合子知事が編成した予算案は、一期目最後となります。小池知事は「東京2020大会を確実に成功させるとともに、『成長』と『成熟』が両立した、輝ける『未来の東京』を創る予算」と位置づけ、予算発表の記者会見では「誰もがいきいきと活躍できる」「日本の発展をけん引し、世界の中で輝く」など、聞き心地の良い言葉を並べて説明しました。
しかし、その内容を見ると、その言葉とは裏腹に、都民の福祉・暮らしを守るべき東京都の予算案としては、大きな問題があります。
医療後退の病院独法化
その一つが、医療後退、患者負担増につながる都立病院・公社病院の独立行政法人化のために、6億円の予算を計上したことです。独法化は、コスト削減などを目的に、都が直接責任をもつ運営をやめ、より「民営化」に近い運営に切り替えるものです。
全国各地の独法化された病院では、経営の効率化や採算性が強調され病院の廃止や大幅な病床の削減、差額ベッド料の引き上げなど、公的に担う医療の後退、患者負担増につながっています。
また、小池知事は「長寿」を重視した予算だと言っていますが、特別養護老人ホームの整備費補助(29億円減)や介護老人保健施設の整備費補助(9億円減)、認知症高齢者グループホームの緊急整備費(2億円減)や地域密着型サービスの整備予算(3700万円減)を軒並み大幅に減らしています。
高すぎる国民健康保険料(税)や後期高齢者医療制度の保険料値上げに対する新たな軽減策はありません。入居を希望しても抽選に当たるのは「宝くじなみ」に困難と言われる都営住宅は、新規建設は石原都政以来21年間ゼロです。防災対策の柱とも言われる住宅耐震化助成は、今年度に続き大幅減額です。
教育分野でも、忙しすぎる教員の「働き方改革」への抜本対策は何も示されず、小中学校の少人数学級の取り組みも前に進んでいません。
大型公共事業引き続き
無駄遣いとの批判を呼んでいる1㍍1億円もかかる外郭環状道路の建設は、引き続き推進し、東名高速以南に延伸する調査費まで計上しています。さらに、街の分断・立ち退きなどに多くの住民が反発している都の都市計画道路「特定整備路線」の建設に561億円もの予算を計上しています。
また大型クルーズ客船のふ頭整備は、これまで330億円もの巨費が投入されてきましたが、新年度も65億円が計上されています。