羽田空港増便のため、政府が29日から運用しようとする新飛行ルートの問題点について、日本共産党の山添拓参院議員(東京選挙区選出)に聞きました。
新ルートに旅客機を飛ばせる実機飛行確認(1月30日~2月12日)で3つの問題が明らかになりました。
第1は騒音。速報値しか出ていませんが、政府が想定した最大値を上回るものが出ています。東京都港区や品川区で幹線道路なみの81デシベル、川崎市の工業地帯では94デシベルを記録しています。
政府は騒音対策として飛行高度を引き上げ、その結果、着陸時の降下角も世界標準の3度から3・45度に引き上げました。
実機飛行確認では3度の降下角での飛行も行っているので、その値を明らかにして騒音対策としてどれだけ効果があったのか、検証する必要があります。
第2は威圧感です。品川区のJR大井町駅上空の飛行高度は約300メートルとされていますが、ビルにぶつかりそうな高度に見えます。保育園児が泣き出したという報告もされています。
第3は急降下の危険。エアカナダは成田へ回り、デルタ航空は3・45度での実機飛行確認を行いませんでした。また、この角度で飛んでいるパイロットはいないと、パイロットの国際組織IFALPA、国際民間空港の業界団体、IATAも懸念を表明しています。
赤羽一嘉国土交通相が日本航空と全日空のパイロットから4日に意見聴取し、機長側が降下中に降下角を3・45度から3度に変更する着陸方法の運用を要望し、国交相はこれを認めたと報道されています。
なぜ容認したかー。
急降下は騒音対策というのは口実で、「しんぶん赤旗」日曜版が昨年スクープした、羽田空港の西側に位置する米軍が管理する横田空域との関係ではないかということになります。
新ルートのうち、南風好天時コースでの羽田空港着陸への最終進入開始点は中野区上空になります。横田空域内を飛行する米軍機との高度差を設けるため、同地点で3800フィート(約1160メートル)の高さを確保する必要がある。そこから羽田空港へ線を引くと3・45度になるという訳です。
羽田増便、新飛行ルートが浮上した背景はー。
成田空港が1978年に開港し、国際線は成田、国内線は羽田という運用となりました。2010年に羽田の第4滑走路が完成すると、徐々に国際線も増やされてきました。
12年末に発足した第2次安倍晋三内閣は「企業が世界で一番活躍しやすい国」をうたい、東京にヒト、モノ、カネを集中させるインフラとしてリニア建設、国際拠点港湾などとともに首都圏空港への機能強化が出されてきました。
五輪のため、外国人観光客の増加のための増便というのは後付けで、実際はビジネス客が目当ての、東京一極集中をさらに進めるものです。東京都も「国際金融都市・東京」といい、政府と一体となって進めています。
世界的には空港は都心から郊外に移す動きですが、それに逆行する流れです。
新型コロナウイルスの影響で、国内外で航空需要が大幅に減少しています。少なくとも、29日から新飛行ルートを運用する必要はありません。
パイロットも住民も危険性を指摘する新ルートはきっぱり撤回すべきです。
(2020年3月20日付「しんぶん赤旗」より)