2020年東京五輪大会の選手村整備(東京都中央区晴海)の名目で都有地を破格の安値で、売却した問題に関与した不動産会社とコンサルタント会社計10社に、都幹部OB22人が天下りしていたことが21日までに、「しんぶん赤旗」の調査で明らかになりました。
都有地 9割引き関与か
選手村用地の売却契約は、小池百合子知事と特定建築者11社が2016年に結び、売却額は129億6000万円。
1平方メートル当たり9万6784円で、近隣の基準地価の10分の1以下でした。
「しんぶん赤旗」は東京都幹部OBの協力を得て、2008年度以降の各種OB名簿をもとに、都有地投げ売りに関与した企業への天下り状況を調査。
格安処分に関与した協力事業者「晴海スマートシティグループ」(13社)のうち9社に延べ21人の都幹部OBが天下り(うち1人は2社を渡り歩き)したほか、パシフィックコンサルタンツにも2人天下りしていました。
天下りOBのうち局長級が14人・6割を占め、役職は常務取締役、取締役、参与、顧問、理事など。選手村所管の都市整備局出身が13人いました。
また工事を請け負った準大手・中堅ゼネコン4社にも、4人が天下りしていました。
小池知事の責任重大
晴海選手村土地投げ売りを正す会 市川隆夫事務局長の話
私たちは、選手村名目の土地投げ売りは都民に大損害を与えるとして東京地裁に約1500億円の損害賠償請求訴訟を起こしています。
関連企業への都幹部天下りの実態は、官民癒着の深さを裏付けています。
また都は協力事業者との協議記録や、土地売却価格の根拠資料の公表すら拒否しています。
天下りを放置し、情報隠しを続ける小池知事の責任は重大です。
解説 官民ゆ着 業者を優遇
東京都は選手村を東京五輪・パラリンピック大会のレガシー(遺産)としていますが、土地を格安取得した不動産会社が「晴海フラッグ」として販売するマンションは1戸最高2億3000万円。
都民要望の強い公営住宅は新築せず、「億ションを五輪レガシーというのはおかしい」と批判が上がっています。
不動産会社が、なぜ都心の一等地を9割引きで取得できたのか―。
そのからくりは、都がパシフィックコンサルタンツに委託した調査報告書をもとに、都有地売却の際に必要な都財産価格審議会に諮らず、デベロッパーに一番利益の大きい市街地再開発事業方式を採用したためです。
パシコンは土地価格を110億円とし、これを受けて都は日本不動産研究所に委託した報告書をもとに129億円と設定。「晴海スマートシティグループ」と協議し、密室で同グループに加わる11社への格安処分を決めました。
都は“土地価格はオリンピック要因を反映した”とするだけで、具体的な説明はしていません。
都の元幹部は「関係企業に天下りしたOBには、『ドン』と呼ばれる元局長もいる。都有地を9割引きで売り払う合理的な根拠はない。こんなでたらめな処分、私が在職中だったら反対している」と怒ります。
日本共産党都議団は“大手デベロッパーへの破格の優遇措置で、都民に大きな損失を与える”と追及、土地売買契約額を抜本的に見直すよう迫っています。
(2020年3月22日付「しんぶん赤旗」より)