東京都のすべての都立および公社病院の独立行政法人(独法)化が狙われている問題について、「しんぶん赤旗」が「都立病院の充実を求める連絡会」の氏家祥夫代表委員に聞きました。
新型コロナウイルスの感染拡大が重大問題になっているなか、公立・公社病院の役割がますます重要になっています。
感染症指定医療機関は都内に12病院・118床あります。そのうち都立と公社病院で4病院・80床で都内の68%占めています。
都は補正予算で都立・公社病院の陰圧室増床を盛り込み、コロナ対策を強化しています。
コロナ対策は、ウイルスが外に漏れないようにする陰圧室を含め建物や設備を整備することに加え、感染症の対応経験を持つ医師・看護師を配置する必要があります。
日ごろから訓練や研修も必要です。未知の感染症が発生したからといってすぐ対応できるものではありません。
そういう時にこそ、一般会計からお金を出して感染症医療を行うことが、都立の役割であることがますます明らかになりました。
独法の議論は、自民党の橋本内閣時に発足した行政改革会議にさかのぼります。
独法の法律をつくる議論で「民間でできるものは、公ではやるべきではない」との考えで、当時の行革論議は、住民福祉の向上より効率と独立採算を優先することにしました。
地方独立行政法人法の第2条で独法は、公共上必要だけれども、地方公共団体が直接実施する必要がないもので、民間では必ずしも実施されない恐れがある事業を、自治体が設立する法人として独立行政法人を定義しています。
公立病院にあてはめると、都の責任が直接及ばない民間病院並みになることを意味します。
都立病院独法化の狙いは、医師や看護師の削減・賃金引き下げといった病院経営のリストラと、病床や公費(一般会計からの繰り入れ)の削減にほかなりません。
都立病院の使命は「行政的医療」という言葉で示されているように、感染症、周産期、小児、精神など、民間病院では不採算の医療に対し、一般会計から繰り入れ(毎年400億円)することで都民の命を守っています。
小池知事や都側は、独法化されてもそれは変わらないと答弁を繰り返しています。果たしてそうでしょうか。
神奈川県の独法病院機構では、一般会計からの財政支援が9年間で33億円も削減され、経営が危機的状況になっています。
都の第2回病院経営委員会(2月4日)で、ある委員が独法後も行政的医療については都の運営交付金を提供していくべきだと発言しました。
それに対し、座長が「名前だけ変わって・・・従前のままでは何のための独法化か」と発言していました。
要するに運営費交付金を独法化したら削減するよとぽろっと本音が出たものではないでしょうか。
(2020年3月27日付「しんぶん赤旗」より)