新型コロナウイルス感染者が急増するなか、医療機関に集団感染が広がっています。
永寿総合病院(東京都台東区)では、患者、医師らの感染が170人に達しました。
同病院は、出産施設が少ない台東区で、出産の2割弱を担っています。出産を控える妊婦の転院先の確保に混乱も起きています。
永寿総合病院は、台東区で最大の400床がある中核病院です。
3月24日に5人の感染が明らかにされたのを皮切りに、感染者が急増。同日以降は外来診療が休止しています。
同病院で分娩を予約していた女性(25)=台東区=は3月30日、感染拡大の影響で「分娩は難しい」との連絡を病院から受けました。
「台東区内にもう一つある分娩可能な病院に転院できるよう紹介状を書いてくれるということで安心していたんですが。結局、その病院も受け入れられる人数を超えているとのことで…」
受け入れ可能なのは、電車を乗り継いで1時間以上かかる病院しかありませんでした。
女性は「臨月に入って健診に通うのも大変。それなら歩いて行くこともできる近所の助産院がいいと考えました。
検査を受け、母子ともに健康でないと受けてもらえませんが、とりあえずその助産院にお願いしようと思っています」と語ります。
第2子の出産予定日が10日あまりに迫っていた別の女性も、永寿総合病院で感染が急増する中、ツイッターで3月27日、SOSを発信しました。
予定日間近のため、近隣の病院には受け入れてもらえず、唯一転院が可能な病院は、費用が倍の100万円かかるといいます。
「費用の救済はないのでしょうか」「助けてください」と訴えていました。
メッセージを見た日本共産党の秋間洋区議団長がツイッター、電話で女性に連絡。
事情を聞いた上で、区に転院できる産科を早急に確保するよう対応を求めたところ、30日に女性の転院先が決まりました。
党区議団は4月1日、山添拓参院議員、谷川智行衆院東京比例候補とともに、永寿総合病院の危機から患者、地域住民、職員の命と医療体制を守るため、厚生労働省への緊急要望を行いました。
同病院で分娩を控えている妊婦に対し、転院先を速やかに確保するとともに、分娩費用が増える場合には、差額を公的に補てんする措置を取ることなどを求めました。
東京都などは、永寿総合病院内の状況について、地上・地下11階建ての1フロアから全体に感染が広がり、院内感染が疑われることを除いて、情報を明らかにしていません。
同病院で入院治療中に感染し、感染症指定医療機関に転院した75歳女性と、日本共産党の伊藤のぶ子区議は連絡を取っています。
伊藤区議によると女性は、病院内で初の感染確認が発表された3月24日の数日前から、主治医の回診がなくなり、代わりに若い医師が訪れるようになったといいます。
医師や看護師が減っていく中、院内で何が起こっているのか、病院側から全く説明はありません。
感染者が出たことはラジオで聞いて初めて知りました。
同じ4人部屋に入院していた人は次々にいなくなりました。
女性も38度台の発熱が続き、極度の不安に襲われますが、看護師に聞いても何も答えてくれませんでした。
最初の発熱から4日後の検査で、女性は陽性が確認され、3月31日に転院。
伊藤区議は「現在、女性は転院先で安心しているようです。情報が明らかになっていないことで、多くの人が不安を増幅させられています」と話します。
(2020年4月10日付「しんぶん赤旗」より)