東電孫請け企業の労組差別
国会で宮本衆院議員が質問
送配電事業者の「東電パワーグリッド」の孫請けとして、東電発注のメーター交換工事を請け負う株式会社ワットラインサービス(埼玉県蓮田市)。交換工事従事者でつくる労働組合に対し、労働者であることを認めず団交を拒否していることや、組合員に対しメーター交換工事個数を大幅に削減している問題が、共産党の宮本徹衆院議員の国会質問(3月17日)で明るみに出され、経営陣への批判を呼びました。安倍政権が高齢者の雇用やタクシー業界に労働者としての保護のない働き方を導入しようとする中で、請負労働の危険や問題点を見ます。(内田惠子)
全労連・全国一般東京地本・一般合同労組計器工事関連分会が3月26日に開いた記者会見で、工事従事者は口々にワットライン社の差別的扱いを告発しました。
分会長の渡辺清さんは30年以上、この仕事に従事し、研修を任されたこともあるベテランです。「今年3月21日から11カ月間の工事個数を大幅に減らされた」と訴えました。
「前年度は8000個で請負金は年間880万円でしたが、新年度は2000個、220万円です。ガソリン代など経費を引いたら、とても生活ができない」と力を込めました。渡辺さんだけでなく組合員は割り当てを前年度の29%から76%の範囲で削減されるなど、非組合員と比べて差別待遇となりました。
記者会見ではこうした不利益扱いをめぐる経営陣の発言も紹介されました。計器工事部の部長職の男性は、2月25日から4日間、行われた個人面談で、分会員の工事個数や請負金額の減少について、「新橋(東電パワーグリッドのこと)の資材だったら、請負者と新聞沙汰になっている会社に発注するなっていうところ」などと発言。都労委の調停期日に都庁で顔を合わせた回数をカウントし、非組合員との間に差をつけていることを明け透けに述べたことが語られました。
弁護団の鷲見賢一郎弁護士は、「極めて明確な組合差別が明らかになった。こんなに露骨な差別的対応は他に例がないと言えるほどの酷いもので、都労委の救済命令を勝ち取りたい」と話しました。
法律の保護もなく
宮本議員は厚生労働委員会で、労組が会社側の団交拒否を申し立てた事案で3月4日、都労委がこれら請負契約の人たちを、労組法上の労働者と認めたことを紹介。「請負が会社の計器工事部の主要事業を担い、研修や賞罰制度、業務地域や業務日の割り振りによって会社に管理されているとしている」と指摘。上程された「高年齢者就業確保法改正案」について、「(労働者性の高い働き方をしても)労働者保護法制の外に置かれる『請負』や、権利のない『有償ボランティア』を増やすことになる」と批判しました。
宮本議員はワットラインについて「正当な理由もなく仕事量を前年比で4分の3もカットして、生活も成り立たなくしている」問題についても取り上げました。「こういうことは許されるのか」と宮本議員。経産省で東電を担当する官僚に対し、国が進めるスマートメーター交換事業で、東電関連企業が起こした不当労働行為だとして、指導を求めました。
経産省は「個別の事案に応えられない」としましたが、東電に対し法令順守の対応を指導すると言わざるをえなくなりました。
宮本質問をネットで何回も見るという40代の組合員は、「契約が請負だからといって、労基法など労働法制の保護もなく働かされ、会社側との話し合いすら、2年もかけてもまだ実現できない、こうした現状はおかしいと思う。請負を増やすのではなく、働いていれば労働法の保護が受けられるように、精いっぱい、がんばりたい」と話しました。