「危険運転致死傷罪」の要件を拡大する自動車運転処罰法改正案が5日の参議本会議で、全会一致で可決、成立しました。
同改正案は、2017年の東名高速あおり運転事件を契機として、危険運転致死傷罪の類型に、走行中の車の前方で停止または徐行するなどの行為を追加するものです。
日本共産党の山添拓議員は4日の参院法務委員会で、警察庁があおり運転等悪質、危険な運転を抑止するため、取り締まり状況の集約を求めている事を指摘。
警察庁の高田陽介官房審議官は「進路を譲らないなど進行を邪魔されたこと、割り込みをされたり、追い抜かれたりしたこと、車間距離を詰められたことなどを挙げるものが多く見られた」と答弁。
山添議員は「原因、背景を広く把握、分析し、今後の防止対策につなげてほしい」と求めました。
また山添議員は、改正案は現行法と異なり、徐行や停止により、後方の車の速度を利用した犯罪のため、「ドライブレコーダーや車内カメラを始め、客観的な証拠が重要」と指摘。
法務省の川原隆司刑事局長も「ドライブレコーダーの映像、事故現場に残されたタイヤ痕、車両の損傷状況、目撃者、被害者及び加害者の供述など、捜査機関が収集したさまざまな証拠に基づいて立証する」と答弁しました。
山添議員は「重大悪質な事故で適切妥当な刑罰が科されるとともに、冤罪あるいは不当な重罪となることのないよう、客観証拠に依拠した捜査、公判を行うべき」と指摘しました。
山添議員は、同改定案では犯罪の要件となる通行妨害目的が後続車の存在を具体的に認識していなくても足りると説明されているため、犯罪の適用範囲が広がる懸念を指摘。
松原芳博早大教授は「指摘はある意味あっている」としつつ「(通行妨害の)具体性、切迫性を要求することで(他の類型との)同等性は運用上、確保すべきだ」と答えました。
また山添議員は、徐行や停止は、酒酔いや信号無視など単独で危険運転と認定される他の類型とは質的に異なる点をあげ、後続車の速度を利用することで危険を生じさせる行為を犯罪に組み込むことや、立証の困難さなどについての見解を質問。
今井猛嘉法政大教授は、犯罪に組み込むこと自体には理解を示しましたが、「立証の問題は残る。もう少し科学的な捜査の仕組みを考える必要がある」と述べるなど、立証への懸念の声が相次ぎました。
ジャーナリストの柳原三佳氏は、交通事故は一瞬で起きるので「映像があるなら映像でいく」として、供述に頼る捜査方法に疑問を示しました。
(2020年6月7日付「しんぶん赤旗」より)