財界による“雇用によらない働き方”,“新しい働き方”が推奨され、「幸せと成果の両立」がうたわれる一方で、労働環境の悪化が深刻です。首都圏青年ユニオン・飲食店ユニオンの労働相談ホットラインには、深刻な状況におかれる人らから相談が相次いでいます。 (菅原恵子)
「明日から休んで」いきなり無給に
「他の店舗でアルバイトがコロナに感染したから、明日からアルバイトは出勤しなくてよい」―。いきなり電話での出勤停止を受けたアルバイトら飲食店ユニオン組合員は5月25日、雇用主の際コーポレーション㈱(本社・目黒区)前で抗議の宣伝行動を行いました。
同社は紅虎餃子房など中華の他、和・洋の飲食店300店舗以上を全国に展開するナショナルチェーン。雇用の中心はアルバイト従業員です。
出勤停止以来、ほとんどのアルバイト従業員が休業補償を求めたところ、会社は「休業手当は払わない。有給休暇を使ってくれ」と指示しています。また「社員には休業手当を支払うが、アルバイトはシフト制ゆえ支払わない」と一方的に宣言。団体交渉にも応じず、労働基準法をまるっきり無視した対応を取り続けてきました。
この日、マイクを握り訴えたIさん(50)は、2015年から働くベテラン。月30万円以上の賃金を得て社員以上の勤務時間でしたが、5月の給料支払日には1円も振り込まれていません。
この日、宣伝行動と同時に会社へ“団体交渉申し入れ書”を手渡しに行ったものの、担当者が面会を拒否する不誠実な態度でした。他方、宣伝行動前、際コーポレーションの中島武社長が姿を現し、集まる組合員に他人事のように話しかけ様子をうかがう姿もありました。
飲食店ユニオンはその後、厚生労働省内で記者会見し、団交に応じることの他、①全アルバイトへの全額の休業補償②雇用調整助成金の活用③会社の命令をうけ消化した有給休暇の回復―を訴えていることを明らかにしました。
「まるで奴隷労働」名ばかり支配人
スーパーホテルJR上野入谷口で、業務委託の名目で支配人と副支配人を務める2人が5月28日、労働者としての地位確認などを求めて㈱スーパーホテル(本社・大阪市)を提訴。厚生労働省内で記者会見を開きました。
スーパーホテルは国内外に130店舗以上を展開。多くの店舗で男女ペアの“支配人・副支配人”を公募するベンチャー支配人制度を採用し、本社の研修後に業務委託契約を結んでいます。
同支配人制度は「経営者としてスーパーホテルを丸ごとお任せします」「2人(支配人・副支配人)で固定報酬3500万円以上も可能」と言葉巧みにインターネットで公募。「女性の眼鏡禁止」や「笑顔の度合い」など、女性差別の内容が横行した細かいマニュアルが押し付けられています。
支配人の男性と副支配人の女性は▽1400㌻に渡る事業マニュアルがある▽ボールペンなどの備品の購入に本社決済の必要▽本社指示による店舗への住民票移動▽転勤の指示―などがあるとして労働者であると主張。同社に対して、①労働者としての地位確認②未払い賃金(各70万7903円)③将来に発生する賃金(各35万0350円)④未払い残業代(2232万円余、1926万円余)⑤慰謝料・弁護士費用―を請求して提訴しました。
勤務時間は支配人が午後1時~翌朝5時30分、副支配人が午前5時30分~午後1時。住まいはフロント奥の居住スペース2間。寝室に防犯カメラモニターや連絡用の電話が設置され、仮眠程度しか取れません。また研修中に父親が亡くなった副支配人は「(忌引)休暇を取るのか、ホテルを取るのか」と本社の人間に迫られ、葬儀出席を断念し親族と疎遠になってしまったと語っています。
首都圏青年ユニオンに相談した後、会社は売上不振を理由に契約解除を通告。3月24日、副支配人がフロント業務中に本社の男性5人が暴力を用いて排除し、支配人ともども路頭に迷う事態になりました。今も年金手帳など貴重品を含む私物さえホテルに残されたままです。
代理人の青龍美和子弁護士は「雇用によらない働き方、業務委託の悪用だ」と指摘。労働基準監督署への告訴および刑事告訴を行ったことを明らかにしました。
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首都圏青年ユニオン新型コロナ関連労働相談ホットライン(毎週火・金)午後5時~9時03(5395)5359※相談料無料・秘密厳守