米軍横田基地で、6月から7月にかけて異常事態が続いています。6月には米軍が過去最大を大きく超える、800人規模の降下訓練を行うと通知。前後して、オスプレイの部品落下事故、降下訓練中の装備の落下事故が立て続けに3件、起きました。横田基地の機能強化が大きく進み、これまでにない事態を生み出しています。 (荒金哲)
住民「やりたい放題許すな」 横田基地は6月中旬、防衛省を通じて、6月17日からの10日間で800人規模の人員降下訓練を行うと周辺自治体に通知しました。
市民団体「横田基地の撤去を求める会」(撤去の会)の髙橋美枝子さんは「これまで多くても1週間で100人、200人という規模だった。10日間で800人というのは『何を考えているのか』という数字」と憤ります。
陸海空の部隊集結
その間の訓練内容も、激しいものでした。特殊作戦機CV22オスプレイが、ホバリング(空中停止)しながら、兵士をロープで降下させたり、負傷者を収容する訓練を繰り返し実施。ホバリングの高さは、30㍍ほどから、時には5㍍まで下がることもありました。
ホバリング中は、周辺道路を走る車のなかで、会話ができなくなるほどの、すさまじい音が周囲に響き渡ります。
横田基地の運用時間(午前6時~午後10時)を守らず、午後11時過ぎなどにオスプレイが飛ぶ姿も目撃されました。
その後、横田基地ホームページに、この訓練の様子を伝える記事が公開され、関係者を驚かせました。訓練のために、陸海空の特殊作戦部隊が横田に集結していたことが分かったのです。
演習は「グリフォン・ジェット」と名付けられ、オスプレイが配備された空軍の第21特殊作戦飛行隊、陸軍第1特殊部隊群第1大隊(グリーン・ベレー)、海軍シールズ・チーム1などの部隊が参加していました。
特殊作戦部隊を運ぶオスプレイが配備されたもと、横田基地が特殊作戦部隊の訓練拠点、出撃拠点になっています。
初の人員降下訓練
横田基地では6月29日、オスプレイが兵士をパラシュート降下させる訓練を初めて実施しました。目撃した福生市の山中正平さん(71)は、「いつものオスプレイの音と違うなと、ふと見上げると雲の中を飛ぶような高いところを1機で飛んでいました。おかしいなと思ったら降下訓練だった」と話します。
訓練が激しくなるなかで、事故も相次いでいます。6月16日には、オスプレイの飛行後の点検で、サーチライトのドーム(覆い)がなくなっていることが発覚。飛行中に落としたと見られ、落下場所は不明です。
7月2日には、ヘリコプターからの降下訓練中にパラシュートが開かず予備に切り替え、切り離されたメーンパラシュートが、基地外に落下し、立川市西砂町の電線などで発見されました。
横田基地での同種の事故は2018年、19年に続き4回目(表)です。
日本共産党の国会議員と地方議員らは7日、防衛省に「降下訓練を止めさせよ」と抗議・要請しました。担当者は「米側が調査中」として、まともに答えませんでした。
それにもかかわらず、米軍は7日にヘリコプターによる降下訓練を再開。その日の訓練中、今度は福生市牛浜の自転車駐輪場付近に、潜水具の足ひれを落としました。
一連の事故に、市民団体も相次いで、防衛省の横田防衛事務所を訪ね抗議しています。
イラク戦争を超え
事故が相次ぐ背景にあるのが、横田基地の機能強化によって、同基地での飛行回数が激増し、訓練内容も激しくなっていることがあります。
福生市による測定を集計すると、2019年4月から3月の飛行回数は1万4089回で、イラク戦争時の2003年度の1万2754回を超えて、今世紀最多になりました。しかも、今年4月の1か月間の飛行回数は、昨年度の1カ月平均1174回を超えて、1756回にものぼっています(グラフ)。
横田基地の飛行ルート下にあたる瑞穂町に暮らす新井美智子さん(67)は、「コロナ禍で3月くらいからステイホームしている人が多いのに、頭上を朝6時から10時過ぎまで頻繁に飛びました。基地自体には肯定的な人も含めて、『今日もうるさいね』『毎日嫌になるね』というのが近所のあいさつです」と話します。
撤去の会の髙橋さんは、「米軍は3件の事故の詳細も、まったく明らかにしていません。横田基地の機能強化で、かつてない事態が次々に起きています。米軍のやりたい放題を許すわけにはいかない」と話します。