「選挙結果で注目すべきはこちらの票ではなく、清水陣営の得票数だ」「今後、共闘を支えている共産党がさらに力を発揮したら…」。東京都日野市区での都議補選(5日投票)の結果について、東京の自民党地方議員はこう述べます。市民と野党の共闘の“威力”に警戒感を強めています。(日隈広志記者)
同区で立憲民主党、社民党、新社会党が野党統一候補として応援した日本共産党公認の清水とし子候補は3万5034票を獲得。
同市区での共産党得票で史上最多となり、昨年の参院比例での立民、社民、共産の得票合計票(2万8267票)を約7000票も上回る、強い共闘効果が現れた結果となりました。
日野市区での投票率は56・5%(前回49・6%)まで上昇。終盤、「数ポイント差まで迫っている」との情報も流れ、自民党陣営は菅義偉官房長官はじめ、萩生田光一文科相、河野太郎防衛相ら現役閣僚、閣僚経験者を次々に投入。「共産党だけには負けられない」と国政選挙なみの支援を強めました。
これに対し、清水候補は商店街などから幅広く声を集め、論戦で都のコロナ対策を正面からただし、人口20万人の同市で廃止された保健所の復活、少人数学級の実現が急務だと主張しました。
清水候補の陣営を大きく励ましたのが、2015年の安保法制=戦争法反対運動の中で結成された日野市民連合のメンバーが中心となった「市民選対」の取り組みと、立憲民主党・衆院東京21区(日野市、立川市など)の責任者の大河原まさこ衆院議員の支援でした。
選挙戦全体を通じて清水候補を応援した大河原氏は、「相手の共産党批判は追い詰めている証拠」「市議18年つとめた清水さんを、あと一押しして送り出そう。市民の底力を見せつけよう」と声を枯らし、こん身の訴えを続けました。同氏は最終日、共産党選対の求めに応じ、菅直人元首相の応援を要請。菅氏は日野、高幡不動、豊田の3駅前で訴えました。
「これが野党共闘の姿です。野党の本気度を見てください」。大河原氏のこの訴えは、日野市区での都議補選を象徴するものでした。
「市民選対」は、独自に事務所や宣伝カーを手配するとともに、ビラや選挙はがきの作成に関わるなど、市民の自主性を尊重しました。「市民選対」からは「こんなに自由に選挙ができるなんて」という感想も語られ、市民と各政党が横並びで共闘する姿を見た有権者から「こんなにたくさんの市民や政党が応援しているのか」との声が上がるなど、これまでにない支持が広がりました。
選挙をふり返りながら大河原氏が、「清水さんは人に寄り添う活動を長年されてきた方だと感じた」と語れば、清水氏は「大河原さんの学生時代の学費値上げ反対の活動などを知って、昔からの仲間のように親近感が増した」と述べるように、お互いの信頼は日増しに深まり、共闘全体に力を与えました。
「市民選対」メンバーの木村真実弁護士は、「頑張る市民をさらに元気づける共闘ぶりだった」と語り、無所属の有賀精一日野市議は「立民と共産が互いに『ここでしっかり共闘をつくる』という意志の合致がはっきり見えた。権力総動員の相手陣営に負けない力強さだった」と称賛しました。
選挙終盤に差し掛かった6月28日の共産党と党後援会の決起集会では感動を呼ぶ場面が生まれました。大河原氏は冒頭のあいさつの後も、最後まで参加。参加者からは「最後まで参加してくれて率直に驚いた。選挙情勢を共有し、大河原さんが清水候補を『(立民の)公認候補のように応援する』といった通りの行動だった」と語られました。
今後の総選挙に向け何が重要か―。
清水氏は、「こんなに気持ちのいい共闘ができるのだとわかった」と述べ、大義の旗を鮮明にして市民と野党が一体で選挙をたたかう意義を語ります。
有賀市議は、「都知事選で『自己責任から連帯の社会へ』と訴えた宇都宮さんの応援で主要野党がまとまり、『新自由主義からの決別』という大きな流れがつくられている」と強調。木村弁護士は「日野の都議補選での市民と野党の共闘の“財産”を21区全体で共有していきたい」と語ります。
大河原氏は「次の総選挙は安倍政権をひっくり返す選挙。市民と野党の共同が引き続き重要です」と語ります。
市民と野党の本気の共闘が、「自公共闘」の背中をはっきりととらえた。次は逆転へ―。関係者には決意と気迫がみなぎっています。
(2020年7月21日付「しんぶん赤旗」より)