労働組合で生活守ろう コロナ禍で相談急増

 収束の見えないコロナ禍で、働く人たちの権利がおざなりにされています。派遣社員の雇い止めや自宅待機での賃金未払いなどの横行が暮らしを破壊します。労働者を守るたたかいの最先端で奮闘する労働組合で話を聞きました。         (菅原恵子)

一流ホテルに分会結成

 「3月3日に初めてコロナ関係の相談が寄せられ、4月に入りこうした相談が急増した」と語るのは東京地方労働組合評議会(東京地評)の柴田和啓副議長。連日、電話やメールで相談が寄せられると語ります。

 飲食、日本語学校、病院などの職種が多く、社員は在宅でリモートワークする中で派遣、パート、アルバイトが出勤を強要されるケースも多くあるといいます。コールセンターの労働者からは狭い空間で多くの人が電話対応していて対策がないため、感染が心配という声や、勤務医から休日に勤務を入れられたとのメールが寄せられたといいます。コロナ禍に乗じての人員削減のために、パワーハラスメントを受けるなどの相談も目立っています。

 このような相談に東京地評では、行政の相談窓口の紹介の他、法的権利や交渉方法なども含めアドバイスしています。職場に組合のない人には「労働組合に加入することで、団体交渉による解決が可能になる」と紹介をするとのことです。

仕事に誇りを持ち

 1人から加入できる新宿区一般労働組合(新宿一般労組)では6月29日、新しくホテルで働く労働者による分会結成の総会が開かれました。
 一流ホテルの配ぜん業務に従事する労働者が相談に来たことがきっかけです。

 労働者らは5年から30年もの期間、このホテルで「日々雇用」(1日限りまたは30日以内の雇用を複数回、行う労働契約)として時給で働いていました。緊急事態宣言以降、ホテルのイベントは中止されシフトが入らず、休業補償がされずに困っていました。ホテルから有給休暇で対応するようにと言われたと話しています。

 5月18日にホテルが生活保障を求める労働者に対し渡した文書には「日々雇用者としている以上、解雇をするという概念はない」旨が記され、保障もせず離職せざるを得ない状況に追いやったといいます。また、生活に行き詰まった労働者に「自己都合」でなければ離職を受け付けないとし、白紙のままの離職票にサインを強制しました。

 「粗大ごみだって捨てるための手続きが必要だ。オレたちは簡単に捨てられた」と憤る労働者は、東京法律事務所の弁護士らと相談。労働組合について学び、団体交渉での解決を目指して配ぜん人の7割を組織する35人で分会結成に至りました。
 中核となったベテランの労働者は「仕事にプライドを持っている。長年に渡りホテルのイベントを支えてきた」と自負を語ります。当面、9月までの休業補償は勝ち取ることが出来ましたが、生活保障という要求実現まで運動は続くといいます。

 新宿区労連の岡村稔事務局長は同分会について「コロナの影響が出る前は月35万円の賃金の人が、3月はゼロになった。生活が全く変わってしまっている」と現状を説明。「リーマンショック時は首切りもあったが、好調な業種に転職するということも出来た。コロナ禍ではサービス業も製造業も低迷し展望ある業種がない。雇用期間の短縮も横行し、会社の寮を追い出され路頭に迷う人もいる。行政の支援も限られており、困窮の助けになる制度を早急に作るべきだ」と訴えます。

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