コロナ禍のもとでの文化芸術支援/吉良よし子参院議員に聞く

政府動かした関係者の誇りと声
文化を見捨てない政権にかえよう

 長引くコロナ禍で、文化芸術関係者が苦境に立たされ続けています。自粛による損失への補てんを求める現場の訴えに、国はどう応えてきたのか。この問題を国会でいち早く取り上げた日本共産党の吉良よし子参院議員に聞きました。(田中佐知子)

質問する吉良よし子議員=3月18日、参院文科委(「しんぶん赤旗」提供)

―安倍前首相が2月末、学校の休校要請の直前に出したイベント自粛要請は、関係者に重くのしかかりましたね。

減税や補てんを

 そうです。それで急ぎ、日本児童・青少年演劇劇団協同組合(児演協)や日本音楽家ユニオンなどに関係者の話を聞きに行きました。学校公演は次々キャンセル、ネット上にはイベント関係者の阿鼻(あび)叫喚があふれていました。3月10日の参院文教科学委員会でただすと、文化庁はイベント全体はもちろん、休校に伴う学校公演の中止件数すら把握していない。厚労省の雇用調整助成金を使ってくださいという態度でした。文化庁として関係者への独自の支援をと、強く求めました。

 その後、東京都内のライブハウスに聞き取りにいきました。ライブハウスは3密になる施設として首相に名指しされたことで、大打撃を受けていました。「そもそも自転車操業のところに客数が8割減」などの窮状とともに「せめて消費税減税を」などの支援を求める声をきき、3月18日の国会質問で改めて減税や損失補てんなどの支援が必要だと求めました。

 ―5月には映画、演劇、音楽の3団体が初めて共同し、損失を補てんする「文化芸術復興基金」の創設を政府に要請しましたね。

希望招く「変化」

 3月末からのライブハウスやミニシアター関係者による署名を皮切りに、これまで政治とのチャンネルや横のつながりをもっていなかった方々も「文化は生きるために必要で、それを支えているのがわれわれなんだ」という誇りをもって、「文化を見捨てるな」と声をあげた。非常に大きな変化であり希望です。

 この声を受け、与党を含む超党派の議連の総意として、国庫から1000億円支出して関係者が求めている基金を創設するよう文科相に求めました。

 ―第2次補正予算で文化庁の「文化芸術活動の継続支援事業」が7月から509億円で始まりましたが。

制度設計ミスも

 新しい制度ができたことは、声をあげた皆さんの運動の成果です。ただ、何か新しい事業を行うことを前提とした制度になっていて実情に合わないんです。2月末からずっとキャンセル続きで仕事がなく、7月に入り感染者がまた増えてきた状況で、「自己資金で活動してください。かかった費用のうち3分の2程度を後から渡します」と言われても難しい。

 対象者を「プロの」実演家や公演に携わるスタッフに限定するなどさまざまな要件を設けているのもおかしい。文化の裾野を広げている人たちを切り捨て、体力のない人からつぶされていく。生き残れる人だけ生き残ればいいという姿勢です。

 応募しても「繰り返し書類を差し戻される」「質問したくてもコールセンターにつながらない」という相談も山のように寄せられています。「7月に申請してから5回書類が差し戻され、9月になっても結果が分からない。支援を見込んでライブ動画をつくり、前金も払った。さらに残った費用の支払い期限が迫り、不安で夜も眠れない」という方までいました。継続支援どころか、逆に追い詰めている事態に怒りが広がっています。

 文化庁は、制度の応募を9月末に締め切ったものの、使い勝手の悪さから申請数が見込みを大きく下回り、追加募集が決まりました。制度設計ミスです。抜本的に改善し、500億円を困っている人たちに届け切るのは当然のことですし、「補てん」や「給付」なども必要です。

 ―そもそも日本の文化予算は総予算の0・1%で少なすぎます。

日独の大きな差

 日本では、文化は圧倒的な「自助」分野で「公助」は雀(すずめ)の涙です。自粛で感染拡大抑制に貢献し、コロナ禍の人々の心を癒やし支える役割を果たしている人たちに、日本政府はさらに損失を被らせている。ドイツの文化相は3月の時点で「皆さんを見殺しにはしない」「アーティストは生命維持に欠かせない」と断言しました。どんな小さな文化も見捨てないと言い合える社会、公助ができる政権にかえなくてはいけません。

文化芸術活動の継続支援事業 フリーランスの芸術家・技術スタッフや小規模団体の活動費への補助金で上限額は20万円、150万円など

(2020年10月16日付「しんぶん赤旗」より)

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