東京・調布 道路陥没
「東日本高速道路(NEXCO東日本)は『何も問題がない』といってた。こんなことが起こるなんて。晴天のへきれき」―。道路の陥没(縦、深さ5メートル)が目の前で起きた男性(75)=東京都調布市=は不安と憤りを口にします。18日、同市東つつじケ丘2丁目で道路が陥没する事故が発生。現場は関越自動車道と東名高速道路を結ぶ東京外郭環状道路(外環道)の練馬ー世田谷間(約16キロ)の建設工事ルート上にありました。
直径約16メートル掘削機(シールドマシン)が40メートル地下で、トンネル工事を進めています。陥没現場付近を9月14日通過しました。
騒音や振動が
事故の予兆をうかがわせる住民の苦情が相次いでいました。騒音や振動、壁の落下などの被害が、掘削機が移動した線に沿って起きているのです。
「振動音が1日中続いた」「ガラス戸が揺れた」「壁が落下、塀が亀裂、外床が隆起した」「揺れと振動とで家にいられなかった」「地面がひび割れていた」-。これらの被害は陥没現場周辺でも起きていました。
近所に住む30代の女性は「危ないと懸念してきた。NEXCO東日本に疑問をぶつけても一切回答しない。科学的なデータを開示しない。工事日報も出さない。住民からすれば安心材料がない」と怒ります。
NEXCO東日本は陥没などと掘削機との因果関係を調査。工事を中止しています。同社によると、「住民の苦情は把握している。振動や騒音は、自治体の基準を適用して対処している」と話します。工事の事前事後に家屋調査を実施。「損傷があれば補償の対象になる」といいますが、家屋調査の日程は決まっていません。
東京外環同訴訟を支える会の事務局長は「振動、地盤変動の危険性があるとNEXCO東日本には口酸っぱくいってきた。工事に関する情報は非開示だし説明もほとんどしない。『地上には影響ない』の一言で終わりだ」と憤ります。
工事を監視してきた住民団体の女性は「NEXCO東日本の工事長や国土交通省の国道事務所にメールしても返信がない。電話をしてもでない。要請書を提出しても返事が文書で返ったためしがない」といいます。
法でお墨付き
外環道工事は2001年に施行された「大深度法」による認可に基づいています。同法は首都圏と中部圏、関西圏での公共工事に限り、地下40メートルより深い場所であれば、地権者に無断で掘ってもよいとする法律。「地表に影響を与えない」ことが前提です。日本共産党は安全・環境対策が確立していない、住民の意見反映の保障がないなど厳しく批判してきました。
「大深度地下方式で住宅街の真下を掘るのは初めてのやり方。少しでも異変があれば工事を止めるのが当然」-。日本共産党の宮本徹衆院議員は陥没の現場でNEXCO東日本の担当者に詰め寄り、20日に笠井亮衆院議員、山添拓参院議員と国土交通省に徹底した原因究明と計画の抜本的な見直しを求めました。(遠藤寿人)
(2020年10月24日付「しんぶん赤旗」より)