新型コロナウイルスの感染急拡大にどう対処するのか。「桜を見る会」前夜祭の疑惑解明をめぐる新局面への対応は。日本学術会議人事への介入問題への広範な学術界の抗議を菅義偉首相はどう受け止めるのか―。日本共産党の宮本徹衆院議員と田村智子参院議員は25日の衆参の各予算委員会の集中審議で、菅首相の政治姿勢を厳しくただし、緊急のコロナ対策など国民の切実な要求や道理ある主張を突き付けました。
GoTo見直し 予備費活用を
宮本
宮本氏はコロナ対策について、野党の提案に背を向け「Go To」事業を見直してこなかったと批判しました。
宮本 「Go To」事業を見直さないまま感染を広げた反省はないのか。
首相 「Go To トラベル」が感染拡大の主な原因だとのエビデンス(証拠)は存在しない。
宮本氏は、厚生労働省のアドバイザリーボードの「Go Toに東京が加わった10月以降、感染が広がる県が増えた」との指摘を示し、「エビデンスが出て見直すと手遅れになる」と指摘した上で、「危機感が欠けている」と厳しく批判しました。西村康稔経済再生担当相は「知事との連携で対策を講じる」としか語りませんでした。
宮本氏は、中途半端なやり方では感染拡大は一層加速すると批判。「観光業等のみなさんの一番のかきいれどきは年末・年始だ。経済のことを考えても、いまが大事だ」と迫りました。西村担当相は「『Go To トラベル』自体が感染者を拡大させているということはない」と答弁を繰り返すだけでした。
宮本氏はさらに、「Go To」事業を見直し感染拡大を抑える姿勢が医療関係者の精神的な支えになるとして、改めて「Go To」の見直しを求めました。
最後に宮本氏が、医療機関の減収分を補填(ほてん)する財政支援を求めると、菅首相は「これまで3兆円の支援を実施してきた」と述べながら、「現場の医療機関に十分に行き届いていない」と認めました。
田村
田村氏は、年を越せないとの悲鳴は第3波の前から激しく寄せられているとして、残る7兆円の予備費をどう使うのか、今すぐ示すよう迫りましたが、菅首相は明らかにしませんでした。
田村氏は、事業所がつぶれ、雇用が失われてからでは遅いと厳しく批判。菅政権は新しい支援策はなにも打ち出していないとして、医療・経済・暮らしをどう守るのか迫りました。
田村 いま総理が語らなくてどうするのか。7兆円の使い道を直ちに具体化すると約束を。
首相 感染状況や経済状況をふまえて、緊急に予算の手当てが必要になった場合には、ちゅうちょなく活用する。
田村氏は「今がその“場合”だ」として、改めて7兆円の予備費の活用を求めました。(パネル参照)
「桜」疑惑
菅氏重大責任 究明ふたするな
宮本
宮本氏は、安倍晋三後援会主催の「桜を見る会」前夜祭で、安倍氏側が費用を補填していたことについて「安倍前首相は国会で1年にわたり虚偽答弁を繰り返してきたことになる」と指摘。「まさに民主主義を揺るがす事態だ」と厳しく批判しました。
宮本 官房長官として安倍前首相を擁護する答弁を繰り返した責任は重大だ。首相の責任で真相解明する必要がある。
首相 捜査機関の活動内容に関わる事柄であり、答えは控える。
宮本氏は、昨年5月に官房長官だった菅首相に質問したことが事の始まりだとして、「当初から隠蔽(いんぺい)、文書廃棄、虚偽答弁が重ねられてきた。その揚げ句が今回の事態だ」と強調。「首相が解明に後ろ向きなら安倍前首相にきてもらうしかない」として、安倍前首相の証人喚問を求めました。
田村
田村氏は「安倍前首相は、報道内容を何一つ否定していない」と指摘。安倍氏の答弁がうその可能性があると認めるかとただしましたが、菅首相は「私の立場でお答えするものではない」などと述べました。
田村氏は「可能性さえ答えられないのか」と厳しく批判。政治資金規正法違反、公職選挙法違反が疑われる重大な問題だとして、ホテル夕食会の明細書と領収書の控えなど関係文書の提出を求めるとともに、当時の答弁は常識では考えられないと批判。安倍氏の証人喚問を要求しました。
田村 (安倍前首相の答弁を)なんの疑問もなく官房長官としてオウム返しにしたのか。
首相 安倍首相の代わりに答弁する場合は、総理に確認しながら答弁した。
田村氏は、菅政権のもとで局面が変わったとして、「桜を見る会」の調査をすべきだと迫りました。しかし菅首相は「必要な調査はすでに行っている」と無責任に言い放ちました。
田村氏は「桜を見る会の中止だけだとしたら真相究明にふたをすることになりかねない。菅政権の自浄能力が問われている」と厳しく指摘しました。
学術会議
説明を拒否 これが民主主義か
田村
「理由も分からずに権力から突然排除されることに恐ろしさ感じる」―。田村氏は、日本学術会議会員の任命拒否の理由を答えない菅首相に対し、学術界の「空前の規模」の抗議や憂慮の広がりを示してただしました。しかし、菅首相は従来の答弁を繰り返すだけでした。
田村氏は、28の大学と20の学会連合、913の学協会が任命拒否された6人の任命を求め、インターネット署名が短期間で14万人以上集まったことを示して迫りました。
田村 なぜ、これだけの規模で短期間に抗議や憂慮が広がっていると思うか。
首相 さまざまなご意見があることは承知している。会員の任命は公務員の任命であり、理由については人事に関することで答えは差し控えたい。
田村 そういう答弁や説明がされる中で抗議の声明が広がっている。それがなぜかと聞いている。
首相 私の立場で答えるべきではない。
田村 「どうして」に何も答えないことへの危機感が噴き出している。
田村氏は、菅首相が理由を説明しないことへのイタリア学会の声明「《説明しないこと》こそが民主主義に反する権力の行使(国民に対する暴力)であり、主権者である国民に説明責任を果たすことが民主主義の基本」や、自然史学会連合など90学協会の緊急声明「政府によって理由を付さずに任命されなかったことに関して憂慮」を紹介し、ただしました。
田村 日本が民主主義の国だからこそ、理由も分からずに権力から排除されることに危機を感じるのは当たり前ではないか。
首相 公務員の任命の理由については人事に関することなので答えを差し控える。
田村氏は、かたくなに説明を拒否する菅首相に対し、「学術会議は個々の研究者を評価し責任をもって推薦している。自己改革について説明している。首相は任命権が自分にあると言うだけ。これが民主主義なのか」と批判。学者や国民に広がる抗議の声を代弁しました。
(2020年11月26日付「しんぶん赤旗」)