千代田区の石川雅巳区長が区内の高級マンションの一室を優先購入していた問題で、区議会が昨年3月に設置した強力な調査権を持つ百条委員会は12月に最終報告をまとめました。この問題を追及してきた日本共産党千代田区議団の木村正明団長に、調査報告書で何が明らかになり、今後の区政にどう生かすかについて寄稿してもらいました。
日本共産党千代田区議 木村正明
千代田区議会は昨年11月27日、石川雅已区長のマンション優先購入問題の調査報告(以下、「報告書」)を共産、自民、立憲などの賛成多数で承認しました。終始、区長を擁護してきた公明と都民ファーストの会は反対しました。
マンション優先購入問題は党区議団が2017年第一回定例会から繰り返し追及してきたものです。その間の論戦の到達も踏まえ、百条委は石川区長や三井不動産レジデンシャル(以下、R社)の元部長など4人の証人喚問を含め、24回の調査を重ねてきました。
優先販売への見返りを指摘
「報告書」の大事なポイントは4つあります。
一つはR社の「マンションの一室が優先的に区長家族に販売された」と明確に認定したことです。「便宜供与はなかった」という区長の弁明はもはや通用しません。
「報告書」はなぜ区長家族に優先販売したのか―。「事業者に対し相当な利益をもたらした見返り」だった「疑い」と述べています。これが2つ目のポイントです。区長と三井不動産をつなぐ再開発事業は3つありました。
第1が飯田橋駅西口再開発事業です。再開発組合の施行区域に区の提案で区有地を加えたことで、開発事業者は容積率を大幅に増やすことができました。完成した高層マンションの1戸を区長と家族が購入。2年半後に転売し、7000万円の転売益を得たことも調査のなかで明らかになりました。
職員倫理規定 違反そのもの
第2にNHKが報道した三番町のマンションです。R社の建築主が総合設計制度の申請者であり、どの住戸を事業協力者住戸にするかを決める責任者でした。一方、区長は総合設計制度の許可権者であり、事業協力者住戸の購入者です。R社の建築主は区長にとって明らかに利害関係者です。その利害関係者から優先的にマンションを購入したことは区の職員倫理規程が禁じる「区民の疑惑・不信を招く行為」そのものです。
第3が三井不動産の東京ミッドタウン日比谷の再開発です。区道を付け替えた広場(区有地)を再開発エリアに組み込んだことで、ここでも開発事業者は容積率を上乗せしています。
こうした調査結果を踏まえ、「報告書」は調査を進めるほど「石川区長に対する疑惑は解消するどころか、一層深まる結果となった」と断じました。
行き過ぎた規制緩和で
3つ目のポイントは「石川区長がR社と関わった背景に…都市計画等の規制緩和があった」と指摘したことです。3つの再開発事業はいずれも規制緩和のまちづくり手法をとり、高さ・容積率等を上乗せしていました。飯田橋駅西口再開発事業は「再開発等促進区を定める地区計画」、三番町のマンションが総合設計制度、ミッドタウン日比谷が都市再生特区・国家戦略特区などです。まちづくりルールの行き過ぎた規制緩和は、環境を悪化させ、不透明なまちづくり行政の温床にもなりうることを直視すべきです。
4つ目のポイントが、今後の改善策です。今回のマンション優先購入は、まちづくりルールの規制緩和を背景に、倫理感の希薄な区長が引きおこした深刻な「区民の疑惑・不信を招く行為」といえます。そこから導き出した事務執行の改善方向は二つです。
政治倫理基準明確化へ条例も
一つは、まちづくりルールのあり方を見直すことです。「報告書」が述べた建築審査会のあり方の提起はその一例です。同審査会は総合設計制度等への同意、審査請求に対する審理と裁決、行政庁への建議といった重要な役割を担っています。人的にも財政的にも強化が必要だと考えます。
もう一つが特別職の政治倫理基準の明確化です。「報告書」は「特別職の倫理に関する条例の制定」の研究にふれています。この点では全国の自治体の取り組みに学んでいきたいと思います。
党区議団は今回の「報告書」を生かしながら、区民・他会派と力を合わせ公正で透明な区政をめざす決意です。