クローズアップ都議選
「会社のテレワークが増えて、ワイシャツを着て食べにくるお客さんが、ほとんどいなくなりました。売り上げは、いつもの半分以下。家賃がかからないから、何とかやっているけど…」―葛飾区で、中華料理店を営む軍司清さん、登美江さんが話します。
約40年間、店をやってきて、コロナ禍の売り上げ減は、経験したことがないほどの事態。「確定申告の時期になって、介護保険料や、健康保険料の値上がりを実感しています。売り上げが減っているなか、資金繰りがどうなるか…」(清さん)。
財布はもう空に
小池都知事が、コロナ感染拡大の原因として繰り返し「夜の街」と名指しした、新宿区の歌舞伎町でも、多くの業者が苦境にあえいでいます。
自らさばく鮮魚や、山菜やキノコの料理が評判の和食店を営む、佐藤知英子さんもその一人。「うちのような、お酒が大きな収入源の店には、時短営業がすごく苦しい」と話します。
一時は店を休止し、現在は食品ロスを避けるため、予約制にしています。
店を閉めている間に、副業で赤字を補てんしようと、飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員も始めました。配達の帰りに転倒する事故にもあいながら、1日10~12時間の配達を続けたほか、手作りマスクやアクセサリーの販売などで、しのいできました。
「もう、今は財布の中が、スッカラカン。都の協力金が入るまでは、やりくりして耐えるしかない」と、あっけらかんと笑いますが、「昨年の夏は、どんどん赤字が出るのに、都や国の支援はこない。お店を続ける意味があるのか、とまで悩んだ」と振り返ります。
コロナ禍のなか、歌舞伎町では、飲食店の店主などが集まり、「新宿の灯を守る会」を結成。佐藤さんも加わり、希望する店舗への定期的なPCR検査や、家賃への支援などを求めて活動してきました。「コロナがなかったら、守る会の人たちにも出会わなかった。みんな、いい感じにプラス思考で、コロナが終わったら、歌舞伎町をこんな街にしたい、と話し合っているのよ」(佐藤さん)
検査は経済対策
「製造業の人たちが中心だったリーマンショックの経済危機と違い、コロナ禍は、飲食店、観光業や製造業、文化関係など、全業種に及んで深刻な危機を迎えているのが特徴」―日本共産党都議で、中小企業政策などを担当する都議会経済・港湾委員会に所属する尾崎あや子さんが話します。
「ある工場の社長さんは、売り上げが昨年8月150万円が、今年8月5万5千円と話していました。『周りでも廃業する工場が出ていて、東京のものづくりはどうなるのか』と。東京の経済がどれだけ疲弊するのか心配です」(尾崎さん)。
共産党都議団は、「中小企業チーム」を中心に、各分野の業者、地域をまわってコロナ禍の実態を調査してきました。
尾崎さんは、東京都のコロナ禍の中小企業対策について、「11月28日から12月17日までの時短営業要請の際も、夜10時までとするのはなぜか、説明を求めても、まともに答えませんでした。みんなが協力しようと思えるよう、業者に寄り添い、多くの人の納得が得られる形で対策を進める姿勢が、知事にまったく見えない」と批判します。
大きな問題が、都の考え方が、「協力金」にとどまり、時短営業や営業自粛に伴う、さまざまな損失への「補償」をしようとしないことです。3月7日までの緊急事態宣言の延長でも、飲食店などに支払われる協力金は、ほぼ全額が国の交付金が財源で、都独自の財源を使って、仕入れ先や、関連する業界など、さまざまな中小業者を支援する姿勢が見えません。
都は、「安心して商売したい」という中小業者の願いにこたえる、PCR検査の拡充にも後ろ向きです。歌舞伎町の飲食店主の佐藤さんは、「『従業員が定期的にPCR検査をやってます』と店先に掲示できれば、お客さんもかなり安心する。国や都、区はそういう対策こそ、もっと早く進めてほしい」と話します。
尾崎さんは、「徹底した検査で、コロナを封じ込めることは、何よりの経済対策です。そして、都や国の要請に、苦汁の決断で応じる企業、影響を受ける様々な事業者に、都が『自粛と補償はセット』で支援することが、ますます大事になっている」と強調します。