コロナから都民守る
東京都議選(6月25日告示、7月4日投開票=総定数127)の争点、対決構図について、日本共産党都委員会の田辺良彦委員長に聞きました。
「自民・公明・都民ファ」VS「共産・市民と野党の共闘」
都議会自民党批判を掲げた小池百合子知事が2016年に当選し、17年の前回都議選で小池氏率いる都民ファーストの会が55議席を獲得しました。
しかし、小池氏は17年総選挙での失敗を機に自民党への接近を強め、「築地は守る」や都政透明化の公約を投げ捨て、18年には自民都連にも陳謝しました。昨年の都知事選では自民党は小池氏を支援。今や都政は、公明党・都民ファーストの与党に自民党が加わって、経済効率優先で暮らし・福祉に冷たい自民党型都政に逆戻りしているのが実態です。
共産党は前々回の13年都議選で8から17議席、17年に19議席と連続前進。自民・公明・都民ファ以外の議席の6割を占める野党第1党です。
今回の都議選で一部メディアは自民党と都民ファーストのたたかいのように描いていますが、本当の対決構図は「自民・公明・都民ファ」VS「共産・市民と野党の共闘」です。
コロナを抑え込んで安心して暮らせる東京を
コロナ危機の短期収束が見通せないだけに、今回の都議選の最大の争点は、どの政党を伸ばせばコロナ感染から都民の命と暮らしを守れるのかにあります。
緊急事態宣言が再々延長されましたが、菅義偉政権と小池都政に共通するのは、科学的な感染対策を取らず、国民・都民に自己責任を押し付けていることです。なにより、大規模検査でコロナを封じ込める戦略がありません。
都のコロナ対策の補正予算は99%が国からの支出金です。検査でも医療支援でも業者への補償でも、ほとんどが国の施策の範囲内です。
政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、首都圏の自治体の対応について、感染リスクの高い集団・場所を特定し、軽症者・無症状者に焦点を当てた検査を強く求めています。
ワクチン頼みではなく、最大の感染拡大地域である東京都で遅れている変異株のサーベイランス(調査・監視)を含む検査拡大で感染を抑え込むことです。そして、コロナ患者受け入れの有無にかかわらず医療機関を支援すること、徹底した補償を行うことで、コロナを封じ込め安心して暮らせる東京にすることを争点として押し出していきます。
万単位での人の移動が伴う今夏のオリンピックは医療資源の状況から見ても、中止してコロナ収束に力を集中すべきです。
三つの転換で希望と展望が持てる東京を
そのうえで、三つの点で都政の転換を図る都議会をつくり、希望と展望が持てる東京をつくることを呼びかけます。
コロナ危機があぶりだした都政のゆがみを正す
第一は、コロナがあぶりだした都政のゆがみを正し、「ケアに手厚い、命と暮らしを大切にする都政」への転換です。
自民党・公明党は石原都政以来、都立病院を16から8に半減させ、保健所も6割近く減らしました。保健所の医師定数も1994年の56人から20人に減らし、小池都政でさらに15人まで減らしました。そうした中でコロナ感染が広がり、保健所体制が逼迫(ひっぱく)し、都では1月下旬から感染経路を追う積極的疫学調査を抑制しました。
さらに都は財政支出削減のため、コロナ対応で中心的役割を果たしている八つの都立病院と六つの公社病院全てを医療水準引き下げとなる独立行政法人化しようとしています。自民・公明・都民ファは繰り返し、独法化へ都の背中を後押ししています。
共産党はこうした都政の流れを切り替えて公的病院の充実、保健所の増設・拡充を充実していきます。党都議員団の奮闘で、「保健所統廃合で機能強化された」と言っていた都知事を「検証し、あり方を検討する」と言わざるを得なくさせました。ケアに手厚く、雇用と営業を支え、災害から都民を守る都政を実現します。
大型開発優先から都民の福祉・暮らし支える都政に
第二は、大企業だけが「稼ぐ東京」、「国際競争力」と大型開発優先の都政から、都民の福祉・暮らしを支える、まともな自治体を取り戻すことです。
小池都政と与党は「国際競争力」の名の下で、都心を航空機が低空飛行する羽田新ルートや、空洞・陥没が発生している東京外郭環状道路建設などの大型開発を進めています。一方で、21年度予算案を見ると高齢者福祉施設、認可保育園の予算の大幅削減が狙われています。
自民党都議は区長会、市長会も求めている国民健康保険の子どもの均等割の負担軽減について「無責任のそしりを免れず、制度を破壊する」と非難。自民党型都政をけん引する役割を果たしています。
共産党都議団は、昨年12月の都議会で学生やひとり親世帯支援、給食費助成を提案。いま開かれている都議会にも補聴器購入費助成や都営住宅新築・家賃補助を求める条例を提案しています。
高齢者福祉の立ち遅れの打開、子育て支援や「子どもの貧困」をなくす取り組み、働く人の給料の引き上げなど暮らしを支える都政に変えていきます。
個人の尊厳と多様性を重視し、ジェンダー平等を進める都政と都議会に
第三は、個人の尊厳と多様性を重視し、ジェンダー平等を進める都議会をつくることです。
都政では、石原慎太郎知事時代に女性蔑視発言を繰り返し、自民党都議による性教育への攻撃も行われました。14年には質問中の女性議員に、自民都議が「早く結婚しろよ」とセクハラやじをとばし、大問題になりました。
小池都政は、パートナーシップ条例に後ろ向きです。髪に段差をつけるツーブロック禁止や、生まれつきの髪であることの「地毛証明」を求めるなど、理不尽な学校校則もあります。
共産党都議団は女性が72%で抜群の高さです。若い女性が性被害に遭わないよう対策も取らせてきました。2月下旬に都立高全日制の約4割で地毛証明書提出が求められているとの調査を発表し、マスコミでも大きく取り上げられました。今定例会では1435人からの痴漢被害アンケートをまとめ質問し、反響を呼びました。
多彩で豊かな実績— 共産党が伸びれば都政は変わる
共産党都議団の値打ちは「野党第1党」の力を最大限生かして、都民の願いを実現する推進力の役割を果たしてきたことです。
自民党・公明党は一貫して認可保育園の拡充に反対してきましたが、13年、17年都議選で共産党が連続前進し、それを力に自・公の妨害を打ち破って、認可保育園増設について用地取得など具体的提案を行ってきました。その結果、この8年で保育所予算を6倍にし、認可保育園を倍にすることができました。学校の普通教室に続き、体育館にもエアコンを設置することに道を開きました。
党議員団にはコロナ、福祉、ジェンダーなど多彩な実績があります。この党を伸ばせば都民の願いをさらに実現できることを訴えていきます。
都議選は総選挙と直結しています。菅自公政権への怒り、都政への批判の気持ちを共産党に託してもらうことが、最大の審判になります。さらに、この間の共産党議員団の躍進と奮闘は他党にも大きな影響を広げ、全都的な共産党と立憲民主党などとの共闘を発展させてきました。今回の都議選で共産党を前進させ、総選挙での野党連合政権実現の流れを首都・東京からつくっていきたい。
(「しんぶん赤旗」2021年3月16日付より)